物理の勉強と社会性の勉強は同じ!?

もし文系のあなたに、「これから物理の勉強をしてもらいます」と言われたらどうだろうか?
私だったら気が重くなるし、逃げ出したくなる。
今更勉強しても物理の問題が解けるようになるとは思わない。
しかし、ときに支援者は自閉症の子どもたちに対し、同じような要求をしていることがある。

「順番を守りましょう」
「自分の気持ちはきちんと伝えましょう」
「他人の気持ちを大切にしましょう」
「集団の中ではルールに従って行動しましょう」

これらの要求は、定型発達の人たちなら成長の過程で自然に学び、身につけていることである。
だから、これらの要求に対して、特別な難しさは感じないし、できるようになることが当たり前のように感じてしまう。
しかし、自閉症の子どもたちにとっては、こういった社会性のスキルの習得は難しいことである。
何故なら、社会性の違いは自閉症の中核的な特性だからである。

自閉症の子どもたちにとって社会性のスキルを勉強することは、文系の人に物理の勉強をさせるようなものである。
どちらも苦手なことを勉強していることには違いがない。
また、その困難さは人によって異なるため、自閉症の子どもの中には社会性のスキルを獲得することは、「相対性理論を解説できるようになれ」と言っているくらいに感じる人もいるかもしれない。

支援者は、定型発達の視点と自閉症の視点を自由に行き来できることが求められる。
物理の難しさと社会性の難しさを同じように考えられるかどうかが、支援者として大きな違いになる。
自閉症の人たちに「定型発達の視点を想像しなさい」ということは難しい。
だから、定型発達の私たちが自閉症の視点を想像していく。

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