試行錯誤の中から、その子に合った方法が生まれる

「この子には、どんなことをやらせたら良いですか?」
発達のヌケを埋めるには、より良く成長するには、将来、自立するためには。
こういった質問をよく受けます。


子どもさんの雰囲気から、「〇〇をやったら良いな」なんて見えることもありますが、見えたものをそのまま伝えないようにしています。
特に、幼い子の親御さんには。
私のアイディアが合っているとも限りませんし、何よりも言われたことをそのままやってほしくないのです。


子どもが成長のために試行錯誤が必要なように、親御さんにも試行錯誤が必要だと思います。
支援者は、その子の人生の一部分にしか関われません。
しかし、親御さんは、その子が土台作りを行っている期間、一番傍で、一番長く関わる人になります。
ですから、子どもの変化に合わせて、その時々で良いと思う発達、成長の後押しができることが望まれます。
そのためには、親御さん自身が考え、実行できる力を養っていくことが大切です。


「どうして、そんなにポンポンと具体的なアイディアが浮かんでくるんですか?」
と訊かれることがあります。
そして、その言葉の裏には、「私にはできない」という雰囲気を感じます。
親御さんは、「専門家だから」「たくさん勉強しているから」などと思われているようですが、いくら勉強しても、知識を得ても、アイディアが浮かんでくるわけではありません。
やはり試行錯誤の結果だと思います。


私が、親御さんに唯一勝てることがあるとすれば、それは直接か関わってきた方の人数です。
年齢も、性別も、環境も、その人が持つ資質も、まったく異なる多くの人達と関わってきました。
それは、私の試行錯誤の歴史とも言えます。
本人が、親御さんが行ってきた試行錯誤をたくさん見させて頂きました。
ですから、直接的にも、間接的にも、多くの試行錯誤を経験してきましたので、アイディアが出てくるのです。
アイディアとは、まったく新しいものがポッと浮かんできたものではなく、経験の中からの組み合わせです。


親御さんは、私のように何百人もの方達の支援を経験する必要はありません。
他人の子のアイディア、具体的な方法を考える必要はないからです。
我が子の、特に土台を作る時期に、その子に合った発達援助ができれば良いのです。
そのためには、親御さん自身がいろいろと試行錯誤することが大事です。
試行錯誤した1つ1つが、お子さんにも、ご自身にも、成長の糧となります。


「我が子においては、他の誰よりも、私が一番試行錯誤をしてきた」
そういった経験と自信が、子どもの変化に合わせて、その時々でより良いアイディアと援助を生むのだと思います。
子ども時代、土台作りの時期、その重要な役割を担っているのは、他の誰でもなく、親御さんです。
「どんなことをしたら良いかわからない」というのは、ただ単に試行錯誤が足りないだけです。


親御さんが試行錯誤した結果、良い発達援助ができ、お子さんがよりよく成長できることが一番です。
でも、極端なことを言えば、結果が出ても、出なくても良いと私は思うのです。
子どもにとって、自分の親が一生懸命試行錯誤をしてくれた、一緒に成長しようと歩んでくれた、そのこと自体に価値があるのだと思います。
みんながみんな、伸びやかに、まっすぐに成長できるわけではありません。
回り道することもあれば、望んだ結果が出ないこともある。
しかし、子ども時代、一緒になって頑張ってくれたという想いは、大人になってからもずっと子どもの中に残り続けるはずです。


そういった想いが、ある意味、思い出がある人と、そうではない人との違いは小さくありません。
だからこそ、特に幼い子を持つ親御さんには、たくさん試行錯誤をしてもらいたいですし、借り物の子育て、療育に慣れて欲しくはないと思うのです。
自分が考えた方法が子どもに合わなければ、別の方法に変えればよいだけです。
もしかしたら、今、合わなくても、別のときに合うようになるかもしれません。
1つの試行錯誤は、1つの財産です。
それは次のアイディアにつながる財産であり、子どもの内側に思い出となって残っていく財産です。

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