【No.1437】感覚過敏と資質

昨晩、10月に開催された花風社さんの講座のアーカイブを視聴しました。
まだ浅見さんのパートだけですけど。
浅見さんは「付録」と表現されていますが、ばばばっと連想が浮かんでくるような興味深い内容だったと思います。
だから、今日はそのことをお話ししますね。


「感覚過敏と資質」


私は子どもさんの相談、発達援助が中心ですので、【感覚過敏=未発達】と捉えることも、実際にそのような背景、関連性を持っている子が多いのが事実です。
あまり子どもさんの相談で、「ああ、この子は資質として過敏性をもっているな」と思うことは少ないですね。


まだ嗅覚が育っていないゆえに匂いに過敏だったり、反対に匂いを感じられなかったり。
耳全体が育っていないゆえにバランス感覚が悪かったり、聴こえる範囲が狭かったり、過剰に聴こえたり。
触覚過敏も、皮膚感覚が胎児や新生児状態で未発達ゆえに、という場合も珍しくありません。


ですから、アプローチとしては未発達である感覚をそこが育つ時期まで遡り、育て直しを行っていきます。
浅見さんが講座の中でおっしゃっていた通り、現場感覚としても子どもさんの感覚過敏は治りやすいし、治しやすい。
だって、神経発達が盛んな時期で、まさに感覚も育てている真っ最中だから。


一方で年齢が上がっていくうちに治りづらくなると言いますか、未発達である感覚を育てたとしても過敏さが残る人が増えてきます。
確かに耳を育てて聴覚の過敏さ、ご本人たちの言葉を借りれば、「音に振り回されない状態」にまで治ることができた。
耳栓やイヤーマフがなくても生活できるようになった。
人混みの中に入っても、集団内での活動も可能になった。
けれども、刺激に対する過敏さは残存している。
物音や他人の声に振り回されないけれども、ちょっとした刺激、変化に目が行く、気が付く。
視覚や聴覚過敏だった人がとくに人間関係において、相手のちょっとしたしぐさ、表情から深読みするのは、みなさんも感じることがあるのではないでしょうか。


そういった部分を適応という形で磨くことができれば、とても気が利く人、相手の気持ちの機微に寄り添える人、機械などのちょっとした不具合に気がつける人、多くの人が気が付かない次元の情報や刺激を捉え、それをクリエイティブな方向へと昇華できる人になっていく。
例を挙げるのなら過去の相談で役所で働いていた女性がいました。


その女性は子どものときからずっと視覚過敏に悩まされていてお勉強はできたけど、不登校気味で学校生活を送ってきたそうです。
家族のススメで公務員試験を受け、役所に就職。
でも、やっぱり刺激にやられてヘトヘトな毎日を送っていました。
そんなとき、私の存在をネットで知り、出張での相談。
視覚過敏を治すために未発達の部分を育てなおして約半年で感覚過敏の症状が良くなりました。


私は過敏さの背景に未発達が確認でき、考えられることと、そこの育て方を伝える。
だけでなく、面談中、過敏さが活かせる道があるように感じたため、趣味や仕事として活かしていくことが心身の健康、充実感につながるのでは、というお話もしました。
どこからそこに気が付いたかといえば、私の話をメモするノートがとても鮮やかなものを使っていたのと、大事なところはペンの色を変えてきれいに書いていたところ、服装や持ち物の色の組み合わせがきれいだったところ。
そして学生時代、子ども時代の話からずっと絵に興味があり、またきれいな写真を見るのが癒しだったというお話を聞いたからです。
もちろん、対面した時、ご本人から伝わってくるメッセージも大いに影響するのですが、過敏さを治したあとに資質として活かしていけるという確信があったのです。


もう数年前の相談になりますが、その女性はお花屋さんで働いているとのことです。
これは想像ですが、花束のアレンジメントだけではなく、花の健康状態、美しい時期、タイミングもわかるのだと思います。
ご結婚もされたそうで(これは私の相談とは関係なく笑)、役所で働いていた時よりも幸せに生活していると、一緒に相談の席にいたお母様からメールをいただいてます。


子どもさんの場合、未発達を育てなおすと、本来持っているその子らしさ、子どもらしさがでてきて、興味関心のままに遊び、育っていく。
一方で年齢を重ね、大人になっていくにつれて、その過敏さとともに生きてきた、サバイバルしてきた人たちは、資質として刻まれているような印象があります。
一緒に生きてきた過敏さと決別するのではなく、その過敏さを包んで、今度はよりよく生きていくために活かしていく。
その点は過敏さがただの不具合、生きづらさでしかない幼児さん、子どもさんとは違う点だと思います。
神田橋先生もよく著書の中で「自閉を活かす」などと表現されていますが、その人の人生の歴史から見ると、決別よりも共に歩む、活かすのほうが心身の養生につながるというのが大人の方たちへの援助のキモになるのではないでしょうか。


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