【No.1384】育っている証
「なにをしたらよいか、わからない」
この悩み、相談は開業当初から続くものです。
なので、新しいアプローチや療法が登場すると、ワーッと親御さん達が集まるのは理解できます。
「普通の子育てはムリです」
そんな風に言われれば、途方に暮れてしまうのは当然でしょう。
自分が受けてきた子育て、同年齢の子が受ける養育じゃダメ。
「だったら、なにをすればいいんじゃ」となりますね。
かつてTEACCHやABA、SSTや感覚統合などがウケたのも、マニュアル化された療法で、なにをやったらよいか具体的だったからだと考えています。
だって、結果が伴っていないのに続いていたから。
幼少期からTEACCHをやろうが、ABAをやろうが、結局、行きつく先は福祉施設。
学校が提示してくる進路も、支援付きの就労か、障害者枠での雇用。
私には「自立」よりも、「やっていること」自体が目的になっていたように見えました。
「できることはなんでもしたい」というのは純粋な親心だと思います。
しかし「なにをするか」が重要であって、発達障害に良いといわれることを「なんでもする」は違うのです。
同じように発達が遅れていたとしても、個人によってその背景や原因は異なります。
というか、そもそも「発達障害」や「自閉症」などが幻想であり、統一された状態などないのです。
目の前の子の個人を見ず、どこのだれかに効果があったといわれる方法を行う。
ある子には改善につながったけれども、別の子ではネガティブな結果につながった、なんてことは当たり前にありますよね。
正直、「できることをなんでもおこなった」結果、却って治るから遠ざかっていた家庭も多く見てきました。
その理由は単純で、子育ては引き算だから。
とくにヒトとして生きる土台となる動物の部分を育てる時期(0~5歳前後)は足すことよりも、引くことが重要。
生まれ出た環境、自然に必死に適応するために身体、神経、感覚を育てているのですから、人為的、人工的な刺激は邪魔なのです。
ナントカ療法、アプローチを「しよう」とした時点で人為的であり、それ自体が人間が考えた人工物ですね。
日々の生活の中で、子ども達は遊びや運動を通して、「いま、こんな刺激がほしい」「いま、こんなところを育てたい」というメッセージを発しています。
そのメッセージが受け取れるかどうかが大事なのです。
我が子が何を育てたいかが分かったうえで、「じゃあ、その部分を育てるには〇〇アプローチがいいね」となれば、発達の後押しにつながるでしょう。
でも、「発達障害には栄養療法が良いらしいよ」とサプリを飲ませたり、「ハイハイを抜かした子は、ハイハイをもう一度、やらせたほうが良いらしい」とハイハイをさせたり…。
これだと永遠に足し算を続けちゃいますし、子どもが主体的に育っていく時間、環境、機会が奪われていきます。
本当に育てたいところから離れていってしまう。
目覚ましい変化、改善があった家族の存在を知ると、自動的に「良いアプローチをたくさんやったんだろう」と思いがちです。
しかし実際はその逆で、治った家庭ほど、一般的な子育てをしているものです。
普通の食事をして、普通に遊びに行き、普通に旅行して、普通に生活している。
その中でその時々、子ども自身が育てようとしているところがあるから、それに見合った環境や後押しをしているのです。
「朝起きたら身体アプローチして、日中は感覚統合とSST、寝る前は金魚体操を」なんて家はないですね。
上手な家庭は新しいアプローチが出てきたら勉強はするものの、「うちには必要ない」と思えばやらないで、どんどん捨てていく。
子どもの興味関心、どこを育てたいか、どんな発達刺激を求めているか、は日々変わっていくものです。
そのとき、必要だったアプローチも、今は必要なくて、却って発達に邪魔になっている、ということもある。
だからこそ、共に生活している家族こそが我が子の一番の専門家。
一つのことしかできないのは専門バカで、目の前にいる子どもに合わせて言動を変えられるのが本当の専門家。
ですから、なにも特別なことをする必要はなくて、我が子に合わせた子育てをしていること自体が発達援助。
子どもが元気に笑っていれば、それこそがよりよく育っている証ですね。
☆『医者が教えてくれない発達障害の治り方』のご紹介☆
まえがき(浅見淳子)
第一章 診断されると本当にいいことあるの?
〇医者は誤ることはあるけど謝ることはない
〇早期診断→特別支援教育のオススメルートは基本片道切符
〇八歳までは障害名(仮)でよいはず
〇その遅れは八歳以降も続きますか?
〇未発達とは、何が育っていないのか?
〇就学先は五歳~六歳の発達状況で決められてしまうという現実
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのメリット
〇現行の状況の中で、発達障害と診断されることのデメリット
〇療育や支援とつながるほど、子育ての時間は減る
第二章 親心活用のススメ
〇親子遊びはたしかに、発達に結びつく
〇変わりゆく発達凸凹のお子さんを持つ家庭の姿
〇学校は頼りにならないと知っておこう
〇安定した土台は生活の中でしか作れない
〇支援者が行うアセスメントには、実はあまり意味がない
〇親が求めているのは「よりよくなるための手がかり」のはず
〇人間は主観の中で生きていく
〇専門家との関係性より親子の関係性の方が大事
〇支援者の粗探しから子どもを守ろう
〇圧倒的な情報量を持っているのは支援者ではなく親
第三章 親心活用アセスメントこそ効果的
〇子育ての世界へ戻ろう
〇その子のペースで遊ぶことの大切さ
〇「発達のヌケ」を見抜けるのは誰か?
〇いわゆる代替療法に手を出してはいけないのか
〇家庭でのアセスメントの利点
1.発達段階が正確にわかる
2.親の観察眼を養える
3.本人のニーズがわかる
4.利点まとめ
〇家庭で子どもの何をみればいいのか
1.発達段階
2.キャラクター
3.流れ
4.親子のニーズの不一致に気を付けよう
第四章 「我が子の強み」をどう発見し、活かすか
〇支援と発達援助、どちらを望んでいますか?
〇子ども自身が自分を育てる方法を知っている
〇親に余裕がないと「トレーニング」になってしまう
〇それぞれの家庭らしさをどう見つけるか
〇親から受け継いだものを大切に、自分に自信を持とう
あとがき(大久保悠)
『医者が教えてくれない発達障害の治り方①親心に自信を持とう!』をどうぞよろしくお願い致します(花風社さんのHPからご購入いただけます)。全国の書店でも購入できます!ご購入して頂いた皆さまのおかげで二刷になりましたm(__)m
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