【No.1380】フラクタル構造の視点を取り入れる理由

講演会の「フラクタル構造の話が面白かった」という感想をいただきました。
確かにあそこは講演会のキモの一つでした(ご興味ある方はまだ配信視聴が可能です!お申込み、冒頭の動画視聴はこちら)。
みなさん、どの講演会に行っても『課題』や『症状』に対してどんなアプローチをするかっていう内容ばかりでしょ。
それじゃあ、部分的には良くなるけど、全体的には良くならない。
だって課題や症状の原因にはアプローチできていないから。
そしてまた問題の全部をその子自身にあるように思っちゃうから。
神経”発達”の問題なので、育つ環境とどんな刺激が身の回りにあるかってとても重要ですね。


アセスメントにおけるフラクタル構造を簡単に言えば、「同じような課題は親御さんの中にもある」という感じでしょうか。
言葉の遅れがある子は、親御さんにも言いたいことがいえない、という課題があったりする。
発達の問題、障害特性と言っても、いろんな症状があるわけで、「どうして言葉の遅れなの?」という疑問に対して、単に「運動発達が抜けたから」では30点くらいの解答になります。
もちろん、言語発達には運動発達が土台であり、重要なんですが、それだけでは一側面から見ただけにすぎません。
ハイハイを抜かす子なんてごまんといるわけで、そんな子がみんながみんな、発達障害にならないし、言葉の発達が遅れるわけじゃない。
言葉に遅れが出た背景、要因が複数あって、そしてたとえそのような条件が整ったとしても、「育たずそのまま遅れている理由」がある。
その背景、要因、理由を多角的に見る視点が「フラクタル構造」の考え方なんですね。


フラクタル構造の話になると、「私(親)の問題も追及される」というように受け止める人もいます。
「過去の過ちを責めるつもりだ」と思う人もいるでしょう。
しかし私はそんな意味で親御さんの問題を確認しているのではありません。
あくまでその子が「治る」ために必要な情報を集め、よりよく育つ環境づくりを目指しているにすぎません。


親御さんの問題は子どもの問題とつながっています。
ですから、たとえば親御さんに食事・栄養の課題があるとわかれば、またその影響を大きく受けたと考えられる場合は、「じゃあ、この子にとって食事や栄養面からのアプローチはとても有効だ」という判断に使います。
そして実際に親御さんにまず試してもらうことで、効果があったものを我が子にもやってもらえるとより効果が望まれると考えるわけです。
それがよくいう「親子で一緒に治る、育っていく」ということですね。
さらにそうやって親御さんが心身共に充実してくれば、親御さんの子育てに向かう力がアップするし、親御さんのポジティブな行動が共に生活する我が子の良い刺激に変わっていくことができる。


子どもが生まれたからと言って、その瞬間に親になるわけじゃない。
子どもが5歳なら、親になって5年。
みんな四苦八苦しながら、試行錯誤しながら親自身も親になっていく。
ましてや、発達に課題がある子の子育てなんて、相当大変で学んだり、悩んだりすることが多くなる。
ですから、その親として育つお手伝いと、子どもの課題、発達の遅れが少しでも早く改善していけるようなアイディアを伝える仕事をしているんですね。
専門機関や療育に行っても、支援者になる方法は教えてくれるけど、我が子にとって良い親になる方法は教えてくれないでしょ。
親御さんが聞きたいのは支援の方法ではなく、親も子もよりよく育っていけるアイディアだと私は思うんです。


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