子育ての主導権をしっかりと握っておく

ヒトとしての土台作りは、家族と家庭生活が中心だと思っています。
特に、発達障害の子ども達は、お勉強が始まる前の時点で遅れやヌケがあり、それも脳の表面ではない深い部分で起っていますので、幼少期からの子育て、親御さんの主体性と選択が重要になってくると思っています。


「支援」や「療育」という言葉は、子育ての主導権を自分たちの方へと移すためのギョーカイ用語です。
職業支援者は、いろんな言葉を使いますが、結局、やっていることは子育てなのです。
子育ては、発達障害という概念が生まれる前から営まれていたこと。
生きていくために治しておいた方が良いことは治す、できないことはできるように教える、遅れている部分があれば発達を促す。
これらは、人だけではなく、動物たちも行っているのです。


私は、ギョーカイが持っていこうとする子育ての主導権を、親御さんに取り戻してもらう、持ったままでいてもらうようにしたい、と思い活動しています。
しかし、それは昔のような子育ての姿に戻そうとしているのではありません。
今、発達障害の人達、家族が利用できるサービスが存在しています。
ですから、子どもの成長や発達に必要なサービスは上手に利用しながら子育てを行っていけば良いと考えています。


ただそこには、親御さんの主体性が必要です。
「早期療育が必要です」「放課後は児童デイの利用が良いでしょう」という支援者の言葉を鵜呑みにしてはいけません。
本当にそのサービスが必要なのか?
それを利用することによって、子どものどの部分を育てているのか?
そういったことを考えた上で、選択し、利用することが大事だと思います。
「内容には満足していないけれど、利用できるから」と言って、児童デイや相談支援、療育をルーティンワークのように利用し続ける。
確かにお金は使っていませんが、子どもの成長の時間は確実に消費しているのです。


「親の私が、この子の発達の遅れを取り戻させる、発達のヌケを育て直す」という意識が生まれたとき、生活の見直しが始まります。
私が関わらせてもらっている親御さんも主体性が出てくると、児童デイに通う日数を減らしたり、止めたりします。
また相談や療育機関も、必要なものとそうでないものの選択をするようになります。
これは、私が誘導したのではなく、親御さんの考えによるものです。
親御さんができる発達援助は、たくさんありますし、地域の中には、障害の有無に関わらず、様々な資源があるのです。


これから超高齢化社会がやってきます。
少なくとも、今、生きている私たちの時代は、今、成長過程を歩んでいる子ども達の時代は、そうなのです。
超高齢化社会の中で、福祉の予算がどんどん増えていくと思いますか?
また福祉の中でも、障害者福祉の予算。
障害者福祉の予算でも、発達障害の人への予算が、どんどん増えていくでしょうか?


限りある予算の場合、高齢者の福祉に多く振り分けられるはずです。
障害者福祉の予算の中なら、より重度の生活が困難な障害の人たちに振り分けられるでしょうし、車いすを利用している人たちのようなより一般の人と同じように働ける人たちへと振り分けられるはずです。
いくら建物を青くしても、いくら啓発イベントをやっても、超高齢化社会はやってきますし、無い袖は振れないのです。
ミサイルが飛んで来れば、領海を侵犯する船や飛行機が来れば、対処せざるを得ないのです。
そんな時代を私達は生き、子どもを育て、社会に送りだしていくのです。


児童デイに1日1万円かかっています。
1万円使えるのなら、当地で言えば湯の川温泉に泊まり、新鮮な魚介類や野菜を食べ、温泉に入り、波の音を聴いて眠った方が、リフレッシュできて、心身が安定するかもしれません。
こんな制度、予算が持続するわけありません。
予算が減れば、撤退する児童デイ、福祉事業所が出てきます。
第一、すでに福祉で働く人材がいないのです。


「発達障害のある子の成長や発達が、専門家にしかできない」というのは、集団誤学習です。
一切、支援者の手を借りず、お子さんを育て上げ、社会の中へと送りだした親御さんが、今この日本にいるのです。
こういった親御さんが、特別だとは思いません。
みなさん、主体性があり、我が子の育ちのために自ら選択し、障害云々で子育てを諦めなかった人達。
だから、どの親御さんにも、我が子の発達の遅れやヌケを育て直すこと、より良く成長した姿で社会に送りだすことができると思います。


「発達に遅れがあるのなら、それを取り戻せば良いだけ」
こういったメッセージを、一人でも多くの親御さん達に伝えていければ、と思っています。

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