支援者の描く自閉症像に寄っていく子

これは私の感覚のお話です。


「THE自閉症支援みたいな支援を幼少期から受けている子が、どんどんTHE自閉症っぽくなるようになる」
そんな風に感じることがあります。


確かに自閉症の器質があり、その特性も出ているけれど、その子には自然な雰囲気があった。
でも、THE自閉症支援を受けてるうちに、その子自身がTHE自閉症に近づいていくような感じがあります。


THE自閉症支援も、経験の少ない、発展途上の、白いキャンパスを持つ子どもにとっては、重みのある刺激であり、重圧感のある環境です。
そういった刺激と環境の中で過ごせば過ごすほど、脳は与えられた場所でより良く適応しようと形作り始めます。
自閉症の特性を持つ脳が、THE自閉症へと歩み始める瞬間です。


THE自閉症へと歩み始めた脳は、THE自閉症支援の中で動きが出てきます。
しかし、その一方で、その子から自然な雰囲気が失われていきます、勢いが失われてきます。
コミュニケーションカードが上手に使えるようになると、自然な会話から遠ざかっていくのが、その典型です。
「衝立の中は落ち着くが、居心地が悪い」
「スケジュールがあると安心できるが、生活が窮屈だ」
子どもの中には、このような違和感を感じる子もいます。


THE自閉症支援は、提供する側にその"不自然さ”の認識がないと、THE自閉症支援に酔うという現象が起きます。
THE自閉症支援を提供する→THE自閉症支援に適応する→ますますTHE自閉症支援を提供する・・・。
専門家ではなく、支援マニアになっていく人は、このスパイラルにハマった人間です。
子ども自体がTHE自閉症に適応していっている姿を「自分の支援がうまくいっている」と勘違いするのです。
そして、知ってか知らずか、その子を自立から遠ざけていきます。


THE自閉症支援に適応した子どもは、成長するにつれてTHE自閉症支援を求めるようになります。
それが成人の場合、社会という自然な環境の中で過ごすことの方に違和感を感じるようになるのです。
「支援を受ければ受ける程、自立できない、就職できない」という現実と無縁とは言えないでしょう。


「自閉症として成長したいのではなく、一人の人間として成長したい」
「特別支援が社会に適応できる子ではなく、特別支援適応の子を作っている」
理想と現実です。


自然な雰囲気を持つ自閉っ子には、自然な援助を行い、不自然な雰囲気を持つ自閉っ子には、まず不自然さからの脱却を目指します。
THE自閉症支援を止めた途端、発達が自然で伸びやかになった子も少なくありません。
適応支援と発達援助の違いです。


私がお会いする子の中には、支援者の描く自閉症像に寄っていく子がいるように感じます。

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