本来の成長の流れに戻るための支援

仕事とは面白いもので、一人、私の支援が必要なくなると、二人、新規利用の問い合わせがくる。
で、私が誰も卒業させられていない間は、新規利用の方がこない…。
私の支援がいらなくなった人が、知り合いなど、新しい人を紹介して連れてこられることは皆無なので、本当に不思議なものです。
お客さんを増やすことが目的ではありませんが、「誰かが見ている」という"眼”を感じながら、支援がいらなくなる支援のために、私の仕事に励んでいます。


私の仕事は「支援が必要なくなる支援を行う」というものですから、新規で利用される方にはその旨を伝えています。
「私はずっと支援するつもりもありませんし、支援し続けることもできません」と最初にお話しします。
大切なことは、自ら成長できる段階までいくことです。
それを私は、「その子の本来の成長の流れに戻った」と表現しています。


他の支援者と話したことがないのでわかりませんが、初対面のとき、私はその子の状態、発達段階の他に、「本来の(成長の)流れってどんな感じだろう?」と見ます。
発達の遅れやヌケ、症状や過去の学習の影響で、本来の成長、発達の流れに乗っていけないから支援が必要なのだと捉えています。
そこには大前提として、「どんな人の内側にも、成長、発達させる力を持っている」という信念があります。
「もし本来の流れに乗ったままだと、今頃はこんな姿かな。中学生、高校生、大人の頃ははこんな姿かな」と空想します。


「何かができるようになる」「問題、課題が解決する」というのは、私が考える支援の目的ではありません。
あくまで、それらは成長の流れに乗るための前段階の行為。
本来の流れに戻りさえすれば、あとは本人が治し、本人が成長させていくのです。
ですから、流れに乗る前までが私の仕事になります。


支援に携わっていると、ある瞬間、「流れに戻ったな」と感じることがあります。
それは初対面のときに見えたその子の本来の成長の流れです。
そして、本人と親御さんに「そろそろ卒業のときがきましたね」とお話をします。


これも面白い話で、「卒業」の話を切りだすと、本人は「わかりました」ですとか、「私もそう思っていました」ですとか、「もう大丈夫です」と言います。
一方で、親御さんの方が「もうですか」「もう少し」などと言われます。
こういった姿を見るたびに、子ども自身は、自分の状態と自分の成長の流れがわかっているのだと感じます。
なので、やっぱり私の役割は、「その前まで」だなと思うのです。


「卒業があるから新たな出会いがある」
そんなことを仕事をしながらも感じています。
そして「卒業させられるから私の仕事が続く」という誰かの"眼”を感じながら春の気配を感じる今日この頃です。

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