障害を隠している人たち

この仕事を始めてから、「実は私、アスペなんです」「発達障害なんです」と話して掛けてきてくれる人とお会いするようになりました。
88人に1人の割合で、自閉症スペクトラム障害の人がいると言われていますので、特別驚くことではありませんが、自分が自閉症や発達障害であることについて周りにオープンにしていない人が多いことに驚いています。
何故、周囲に自分の障害について話していないか、という理由はそれぞれです。
就職ができなくなる、というような社会的な不利益のため。
親や家族が認めてくれない、というような事情のため。
差別や偏見といった無理解のため。
ある方は「診断を受ける利点があるとは思えない」と言っていました。

近頃、仕事の関係で視覚障害、聴覚障害の方たちと関わる機会が増えました。
視覚障害の人たちは、「全然見えないんだよ」「右目だけが見えない」「見えるには見えるけど、見える部分が狭いんだ」などと自ら言ってくれます。
聴覚障害の人たちも同様に、聞こえないことを話してくれます。
視覚、聴覚障害の人たちは、自分の障害についてオープンです。
自閉症の人たちと同じように、見た目では分からない障害なのに。

他の障害を持っている人と比べて、自閉症、発達障害の人たちが自分の障害について語らないのには、そこに不利益が生じるからだと考えています。
障害について話したとしても、障害のことを正しく理解してもらえない。
また、仕事に就きづらくなる、いじめられるなど。

視覚や聴覚に障害のある方、身体に不自由がある方などは、障害のない私たちでも障害の苦労やどのようにサポートしたら良いのか、想像しやすいということがあります。
一方、自閉症、発達障害の人たちの苦労や望まれるサポートは、想像しにくい。

自閉症、発達障害が悪いことではないのに、隠して生活をしている人が多くいます。
彼らが当たり前のように地域で暮らしていける社会にしなくてはならないと思っています。
それには自閉症、発達障害について理解の輪を広げていくことが大切です。
他の障害や障害のない人と同じように、自分のことを隠す必要がない地域、社会を目指していかなければ、と当事者の方たちとお話しするたびに思っています。
「自閉症のままで生きられる地域、社会」を。

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