人生の目的は就労することではない

「目的は個人の幸せ。就労することではない」
この言葉に、ハッとさせられる支援者も多いのではないでしょうか。

この言葉は、アメリカで出会った自閉症の支援を行っている人が言っていたことです。
しかもこの人の仕事は、自閉症者の就労の訓練を行うこと。
つまり、就労の専門スタッフが、目的は就労することではないと言っているのです。
あくまで目的は"個人の幸せ"なので無理や我慢をさせるようなことはせず、支援者側が個人に合わせて柔軟に指導や支援を行っていました。

"人生の目的は働くこと"ではない。
ほとんどの人がそのように考えているはずなのに、実際は働くことが中心になって生きている人が少なくないと思います。
働くことによって、自己実現ができたり、周りから感謝されたり、お金を得て好きなことに使えたりと、働く意義は人それぞれです。
しかし、働く目的の先には、みんな同じで、個人の幸せがあるはずです。
不幸になるために働く人はいないと思います。
これは障害を持った人たちも同じです。

何のために就労支援を行っているのかなと疑問に感じる場を目にすることがあります。
確かに支援者にとっては、障害を持った人たちを就労させることが仕事の中心であり、周囲からも認められることにつながると思います。
自分が担当した人を就労させることができたという事実は、支援者の幸せにつながるかもしれません。
でも、個人から見た就労は人生の一部でしかありません。
働くことは充実した人生、幸せな人生を送るための一つの要素であって、家での生活や余暇活動などと違いはありません。

同じようなことは学校教育でも言えます。
学校教育はたった12年間です。
一日で学校に行く時間は4~6時間、休みは土日に長期休みもあります。
18歳で高等部を卒業してからの人生は60年続きます。
人生をトータルで見ると、学校教育は短い期間であり、学校を卒業してからが人生の本番と言えるのではないでしょうか。

就労支援の場でも、学校教育の場でも、この人がどうしたら幸せな人生を送られるかという視点を大切にしてもらいたいと思います。
目的が別のものになってはいけません。
「今は私たちが支援の中心」と言って、個人や家庭を低い立場にしてはいけません。
仕事も、学校も、家族も、日々の生活も、趣味も、みんな同じ個人の幸せを叶える要素の一つにしか過ぎないと考えています。

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