専門機関と家庭の間に橋を架ける仕事

「スタッフが療育を家庭に行って行う場合と、施設に来てもらって行う場合と、それぞれの利点を教えてください」
「家庭に出向いて療育を行う場合は、より自然な環境で、より子どもがリラックスできる環境で療育ができるという利点があります」
「施設に来てもらって療育を行う場合は、保護者が他の保護者や子どもと会えるという利点があります」
ノースカロライナ大学で行われた「早期療育」をテーマにした講義の中で、私が質問したこととその答えでした。

私が「てらっこ塾」を出張で行うことには理由があります。
その一番の理由は、自閉症の特性でもある"般化の苦手さ"について思うところがあるからです。
私が施設で働いていたとき、「寮(学校)では落ち着いていたり、いろいろできたりするみたいだけど、家だとね~」と言うお話をよく耳にしていました。
実際、アドバイスや使用している手だて等をお渡しすることもありましたが、家庭に帰って同じようにできることはほとんどありませんでした。
それはそうです。
寮や学校で行っている様子を教えたり、同じ手だてを使ったりすれば、同じようにうまくいくということはありません。
うまくいった同じ方法と同じ手だてに、"教える"という行動をプラスする必要があります。
ある場所で教えて、できるようになったことは、今度は場所を変えて教えることで、その場所でもできるようになります。
私は施設に働いていたとき、場所が変わったときの教育の大切さと、保護者の方たちが求めていることは家でできるようになったり、落ち着いて過ごせるようになったりすることであると気が付きました。

函館を見渡すと、素晴らしい先生や専門家のみなさんがいます。
しかし、それぞれの組織の機能として、実際に家庭まで出向いて療育を行うことが難しいのでは、と感じています。
せっかく学校や専門機関などで療育を行ったとしても、それを家庭に仲介する役割を担うところが少ないと以前から思っていました。
それも自閉症の人たちにとって重要な支援の一つであるのに・・・。
ですから、その専門的な療育を仲介する機能が函館に必要だと考え、出張の自閉症療育を行う機関として「てらっこ塾」を立ち上げるに至りました。

「家に来られるのはちょっと・・・」と思う保護者の方たちも多くいらっしゃると思います。
しかし、自閉症の特性を考えると、学校や専門機関で自閉症の人が学んだことを般化させる役割が重要だと考えています。
どうにか"出張"の意義をみなさんに伝え、自分のうさんくささが解消されるように頑張っていきたいと思う、平成25年度下半期のスタートでした。

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