【No.1421】土を食べたい子ども達
この頃、異食の相談がありました。
異食というのは通常、食べないものを口に入れたり、食べちゃったりすること。
赤ちゃんが唇や舌を使って、そのものを調べよう、感じようとするのとは違うものです。
「食べれないものを口に入れて困ってます」という相談はよくあるけど、その子が探索のため、(感覚)遊びのため、発達のためかは確認する必要がありますね。
もちろん、人間は複雑系で、いろんな理由が重なり合っているけれども、先日の相談は”あえて”異物を食べている可能性が高いと感じました。
異食として思い出すのは、強度行動障害の施設で働いていたとき。
異食は行動障害を診断する項目の一つで(ほかには他害や自傷、奇声や睡眠の乱れなど)、多くの入所者の人が抱えていた問題です。
部屋に落ちているゴミを口に入れたり、壁を指で削ってその材木を食べていたりする人もいました。
そして外出すると決まって、土を食べる人が多い。
20代でペーペーだった私は、「みんな、土食べるな」「土はおいしいのかな」「やっぱり北海道の土は栄養満点なのかな(笑)」なんてくらいにしか思っていませんでした。
止めても、止めても、みんなで食べるもんだから、半ばあきらめて、「どうぞご自由に」という感じに。
で、それから20年くらい経ち、今ではそれは腸内細菌との関係でやっていたことだったんだとわかるのです。
ごはんのおかずくらい向精神薬を飲んでいたので、ほぼみなさん、整腸剤も一緒に服用していました。
これまた当時は「向精神薬の副作用でおなかの調子が悪くなるから」と思っていましたし、医師もそうやって処方していたので疑うことなんてなかった。
でも、彼らは向精神薬の副作用でおなかの調子が悪かったんじゃなくて、そもそも腸内細菌、環境が悪かった。
それがわかったのは、てらっこ塾を起ち上げて、いろんなご家庭の相談を受けるようになってから。
向精神薬を飲んでいない人、飲むような年代ではない子も、おなかの調子が悪い子が多い。
ということは、発達の遅れや神経発達の違い、自律神経や精神的な不調と関係があるのではないか。
こうやって書くと「エビデンスがないじゃないか」と言われそうです。
たしかに腸内細菌を調べたわけでも、それについて研究したわけでもない。
しかし、それに関連する論文や書物はたくさん出ています。
発達障害の原因を「細菌」、もっといえば「腸内細菌の問題から」という専門家もいるくらいです。
土に触れない社会、抗菌滅菌の社会になってから、発達障害やアレルギーなど、子どもの問題が激増しているという話もある。
じゃあ、現場レベルの私が言えることは。
異食の相談で、口の発達がメインじゃないと判断できるお子さんには土遊びを提案することがあります。
実際、土遊びをしてから「おなかの調子が良くなった」「うんちが毎日出るようになった」「精神的に落ち着いた」「授業中、座って勉強することができた」という経過報告をもらうことがあります。
まあ、これは当たり前と言えば当たり前で、ずっと人類は土でできたものを食べて生きてきたのですから。
難しい説明は省きますが、つまり、「土と腸内の細菌層は同じ」
その土地でできたものを、その土地に暮らすものが食べて生きてきた。
今はどうでしょうか。
化学物質によってコントロールされた土。
そして抗菌滅菌で、細菌をできるだけ排除する生活。
それじゃあ、腸内もおかしくなっちゃうわけです。
だから、異食で土を食べたくなる。
自閉症だから土を食べるのではなく、腸内環境を整えようとして土を食べる。
この子たちは問題児でしょうか。
問題があるのは子どものほうじゃなくて、本来、生物の生き方からかけ離れた社会を作った私達おとなのほうではないでしょうか。
土に触れる。
土で遊ぶ。
これに副作用はあるのでしょうか。
向精神薬を飲むのと、どちらのほうがリスクがあるのでしょうか。
土に触れることで腸内環境が整い、課題のなにか一つが解決するのなら、私は良いと思っています。
だから親御さん達も、「そんなことで発達の課題がよくなるのなら」と言って、土に触れる機会を作ってくれる。
庭に土遊びができる場所を作ったり、一緒にガーデニングや野菜を育てようとしたり。
なかなか周りで土に触れる場所がないおうちは、週末、家族で山に出かけたり。
都内のあるご家族は畑を借りて週末だけ農作業をしているというケースもありました。
一緒に活動していた親御さん達のほうが元気になったりするケースも。
発達障害を治すには、リハビリも良い、身体アプローチも良い、体験を増やしてサバイバルスキルを身に付けさせるのも良い。
その一方で、人間本来の生き方、環境に身を置くことも大事だと思います。
まさに自然と発達する環境に整える。
異食を問題と捉えると、「やらせない」「できないようにする」という排除に支援は向かう。
だけれど、子ども達の内なる声と捉えれば、「かなえたい」「応援したい」という援助に支援は向かう。
土に触れると、土を食べていた子は口に入れなくなりますね。
触れるだけでも体内に細菌を取りれることができるそうです。
是非、夏休みは自然体験を。
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