【No.1388】子ども時代の「重度」大人時代の「重度」

私は「重度知的障害」を持つ自閉症の人たちの施設で働いていました。
もちろん、「重度」だけではなく、「最重度」や「測定不能」という人もたくさんでしたね。
でもね、子どもの「重度」と大人の「重度」は違います。
子どもの「重度」は、ほぼ未発達か、誤学習や精神薬の副作用でおかしくなっちゃっている子。
一方で大人の「重度」は、一般の人でもイメージできるような状態。
発語がなかったり、衣食住全般で介助が必要だったり、傍からは意味がわからない行動を繰り返したり、基本的な学力が獲得できていなかったり。


幼少期から確かに「重度知的障害」と言えるような子もいるのも確かです。
しかし、そういった子は少数で、大人の「重度」というような人でも、成育歴や幼少期のエピソードをご家族から伺えば、「それは単に未発達だっただけでは?」と思うことばかり。
卑怯な立場からの発言になってしまうかもしれませんが、2023年、こんなにも未発達や発達のヌケを育てるアイディアが溢れ、こんなにも元発達障害児が大勢いる中から見れば、その人本人の問題ではなく、「適切な教育や発達援助ができていなかっただけ」と思います。
そうです、大人の「重度」と言われる人たちも、元は未発達がたくさんあった子ども達だった。


未発達だった子ども達が、支援という名の介護を受け、個別指導という名の(同年代と)隔離された環境で過ごし、「頑張らなくていい」「そのままでいい」という建前によって教育の機会を奪われた。
そして誤学習が膨らむと、いや、そんな誤学習が起きる前から、「二次障害の予防に」と精神薬が処方され、親の不安を和らげるために子の口にそれを入れる。
そうやって未発達だった子が、知的障害児になり、重度知的障害へと変貌していく。
いや、そのように育てられていく。
このような現実は施設職員の時代も、教職員の時代も、そしていま、てらっこ塾をやっていても、イヤというほど見てきたのです。
ああ、そういえば、この3年間も、でしたね。
大人たちの不安のために、子どもの口を塞ぎ、青春と自由を奪い、わけのわからない薬を突き刺す。


だからね、正直、「うちの子、重度だ」という人は嫌です、嫌いです。
私には「(うちの子、”重度”だから)子育てで責めないでね。私のせいじゃないからね。私ってかわいそうな人間でしょ」という深層心理、邪気が伝わってくるからです。
そんなのをアピールしても、子どもは良くなっていかない。
むしろ、治っていかない家庭の多くは、そういった心持ち、空気感で充満しているから、子どもがのびやかに育っていけないのです。
「重度知的障害」と「未発達」の区別はできているのでしょうか?
というか、どちらも一緒くたにして、とにかく診断名をつけるのが現在の児童精神医療。
子どもが未熟でできないことだらけなのは当然ですから、必要なのは診断名が書かれた紙きれでも、医師のお墨付きでも、精神薬でもないでしょ。
子どもが必要なのは遊びと学びの環境と機会。
そしてそれを十分に満たしてあげる家族。


子どもだけをしっかり見ている親御さんは「重度」なんて我が子のことを言わない。
だって、「この子はまだ育っていないだけ」というように、その子の内側にある育つ力が見えているから。
そして何よりも、「私が”重度”って外に言ったら、そうやって表現、紹介したら、きっとこの子は悲しい気持ちがするだろう」という我が子を想う気持ちを持っているから。
元発達障害児の親御さん達、そして今、子育て中でどんどん育っている子の親御さん達は、みんな、我が子のことを「発達障害児」でも、「重度知的障害」でもなくて、「私にとってかけがえのない〇〇くん、ちゃん」という態度で向き合っていますね。
ですから、「重度」と言っちゃう人は治る、治らないもあるけれども、根本的に愛着に課題があるって言っているようなものなのです。
ということは、子どもの問題じゃなくて、大人の問題。


子ども時代は特に「重度なんて言わずに、未発達という視点で子育てしましょう」というのが私の言いたいこと。
今日もうれしいメールが届き、3歳で「重度知的障害」「自閉症」という診断を受けた子が、今は育って幼稚園で補助の先生なしでみんなと遊べている、ということでした。
休日、公園で遊んでいる写メも添付されていましたが、弾けるばかりの笑顔でしたよ。
そして一緒に写っていたお父さんも、きょうだいも、素敵な表情をしていました。
「この子は重度だから」と言って育てていたらどうだったでしょうか?
「ああ、この子は重度ではなく、育っていないだけ、未発達なだけ」
そう思えると、どんどんやりたいこと、育てたいこと、応援したいことが出てきませんかね。
子どもの持っている育つ力を信じ、一緒に子育てを楽しんでいける人、我が子の成長を喜べる人を増やしていきたいです!
そういったご家族を応援していきたいですね!
家庭でできること、たくさんありますよ!




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