母と子がピッタリくっついている人たち

「お母さんと子どもがピッタリくっついている」と感じることがあります。
この"ピッタリくっつく"は、二人が仲良しで、距離感が近いという意味ではなく、「まさに一心同体」という意味です。
子どもの成長は、自分の成長のように感じ、また子どもの失敗は、自分の失敗のように感じるといった"母子の境目がはっきりしていない"感じです。

こういった親子関係を見ていると、赤ちゃんとお母さんの関係性に近いような感じがします。
赤ちゃんは、まだ一人でなにもできませんので、全面的に手助けしなければなりません。
ですから、一人の人間として距離をおいて見ているのではなく、お母さんの一部のように見えているのだと思います。
そのため、赤ちゃんの日々の成長に一喜一憂しますし、他の赤ちゃんと比べて遅れている部分があれば、ガクッとお母さんの気持ちが落ち込んだりします。
これは赤ちゃんとお母さんがピッタリくっついているからではないでしょうか。

こういった母子の関係性も、子どもの成長とともに距離ができてきて、やがて一人の人間同士として分離していくのが自然な流れです。
しかし、中学、高校、なかには成人になっても、母子が一体化している人がいます。
特に知的障害を持っているお子さんの場合で、「この子をみられるのは私しかいない」というような気持ちを強く持っているお母さんに多いように感じます。

母子がピッタリくっついている場合、他人のアドバイスや支援を受け付けないことがあります。
どう見てもお子さんに困ったことが起きているのにも関わらず、他人が手を差し出そうとすると、拒否したりします。
それはまるで子どものマイナスな部分を認めたくないような。
つまり子どもと母親がくっついているので、子どものマイナスは自分のマイナスの評価と同じなため、恐ろしく感じているようにも見えます。

このように母子が分離していかない背景には、子どもが思うように成長していかない悲しみや、将来の不安、支援者に対する不信感があると思います。
ですから、母子がピッタリくっついて固まってしまう前に、母親を孤立させないことが大切だと思います。
同じ知的障害を持つお子さんがいても、父親が協力的だったり、信頼できる支援者がいると、母子が分離でき、一人の人間として我が子の成長や将来を見ることができます。

知的障害があったとしても、ゆっくりかもしれませんがみんな成長します。
そして、その子自身の人生を歩んでいくのです。

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