パソコンが得意な自閉症の人が、みんなスティーブ・ジョブズにはなりません
自閉症のことを説明するとき、"偉人"が登場するのは、どうにかならないかな~と思います。 一般の人に対しては、素晴らしい才能を持った人たち、周囲の理解があれば、こういった優れた才能を発揮する、というアピールかもしれません。 また、当事者の人に対しては、頑張れば、このような人たちにもなれるんだという希望を抱かせているつもりかもしれません。 でも、実際の自閉症の人たちは、このような類まれな才能を持っている人ばかりではありません。 というか、このような才能を持った人はほとんどいません。 大部分が普通の自閉症の人です。 ですから、"偉人"の登場し過ぎは誤解につながるのでは、と思ってしまいます。 一般の人には、自閉症=天才または類まれな才能を持つという誤解を与え、本人たちは自分には天才的な才能があるという誤解を与え・・・。 ある当事者の方は、「自分には才能があり、偉人たちのようになるんだ」と言って、現状をまったく受け入れず、一般的な仕事に就くことを拒絶していました。 また別の方は自分が偉人のようになれないのは、「周囲が自分を活かせないからだ」「親の教育のせいだ」と言って、攻撃的になっていました。 自閉症の人の"想像性"の部分と関連し、このような情報をそのままの形で受け取ってしまう人は、この人たちだけではないはずです。 確かに"偉人"と言われる人たちには、自閉症の特性を持っていた人が多くいます。 でも、みんながその偉人のようになれるわけではありません。 自閉症の人たちの多くは、一般的な世界の中で生きていきます。 ですから、一般の人にも、自閉症の人たちにも、誤解を与えないようにきちんとこういった事実も付け加えて紹介する必要があると思います。 パソコンが得意な自閉症の人が、みんなスティーブ・ジョブズにはなりません。 絵が得意な自閉症の人が、みんなウォルト・ディズニーにはなりません。 そんな偉人を目指すよりは、その人が持って生まれた資質を開花させ、社会で活躍し、充実した人生を送ってほしいと思っています。 誰も、別の人にはなれませんし、別の誰かになる必要なんてありません。 あなたはあなた。 自分自身を輝かせることが一番素晴らしいこと。