「芋づる式に治そう!」(花風社)を読んで③

1990年代、それまでの"賞罰"と"薬"の支援から、日本にTEACCHの考え方が入ってきて、自閉症支援の雰囲気はガラッと変わりました。
TEACCHの考え方や構造化が自閉症療育で広まると同時に、2000年代に入ると、高機能自閉症ブームになり、ソーシャルスキル、感情コントロールなどの本や研修が盛んになりました。
そして2010年以降は、早期療育などでも、脳への直接的なアプローチがメインになっているような印象を受けます。
ですから、花風社さんはギョーカイとは異なる道を歩いてきましたが、流れは「身体面からのアプローチ」でシンクロしているのだと思います。

あちこちで「ソーシャルスキル」と言っていた2000年代後半、私はアメリカの専門家の間で、ソーシャルスキルを教えることの限界について言及されていたことを知りました。
簡単に言うと、「ある場面で必要なソーシャルスキルを教えたとしても、場面は刻一刻と変わり、多様なのだから、すべての場面について教えていくのには限界がある」ということです。
これは自閉症の人たちの特性を考えてもわかることです。
このような話が聞こえ出したあと、欧米では早期発見、早期療育が研究の中心に移り変わったように感じます。
具体的には、1歳くらいに診断できるようにし、そこから定型発達の子どもが辿るような発達課題を意図的にトレーニングするというものです。
(これは私が研修や書籍、専門家の話などから想像したストーリーなので、合っているかはわかりません)
ずっとソーシャルスキルについてモヤモヤしていた私にとって、身体を整え、脳の余裕を作ることで、自閉症の人たちが苦手な社会性の部分がつかめるようになる、そして発達&成長するという"芋づる式"は、一気に頭の中の雲を蹴散らしたような印象を与えてくれました。

これから想像されることは、エビデンスを叫ぶ人たちからの批判が挙げられるでしょう。
でも、芋本や黄色の本を読んで、「これは実践しよう」と感じた人たちが、どんどんやっていけば良いと思います。
本を読んだお母さんが、我が子と一緒に取り組み、お子さんにポジティブな変化が見られれば、それが1つのエビデンスとなります。
すでに私は、不登校からひきこもりになった成人の方の支援でポジティブな変化を見ることができました。
私のエビデンス1つ目です!
これから、どんどん結果を増やしていきたいと思います。

良い専門家を見つけて、どうにかしてもらおうとするのは、もう時代遅れ。
社会の理解を求めて「社会ガー」と叫ぶに至っては化石状態です。
これからは、自分で治す時代。
インターネットがあれば、情報は得られますし、本も手に入ります。
我が子に合ったアプローチを選択していき、実践していく時代が来ているのだと思います。
いくら「エビデンス」と叫んでいても、どんどん治っていき、その子たちが社会で活躍していけば、みんな口を閉じるしかなくなります。

最後に私なりの今の捉え方を。
まず身体面を見て、必要があれば、整えていくことから始める。
そして、脳に余裕ができてから、今までの専門家たちが培ってきた技法を用いて療育をしていく。
最終的には、一人ひとりが持っている才能を開花させ、社会で活躍できる人たちを送りだしていく。
これが自閉症支援に携わる者の役割であり、使命である、と。

お菓子をあげても、視覚的に見せても、環境を調整して刺激を統制しても、結局、本人が心身ともに安定しなければ、そして脳に余裕がなければ、効果はないのだと思います。
今まで私たち支援者が常識だと思ってやってきた支援は、無理やり本人たちの手を引っ張るような支援だった気がします。
これからは頭の中に、芋づる式で治っていくストーリーを一人ひとりに合わせ作っていきながら、実践していきたいと思います。
そのためにも、身体面のアプローチ、専門的な療育方法を幅広く網羅していく必要があると考えています。

頑張りたい親御さん、支援者の人には、是非、芋本を読んでいただきたいと思います。
芋本を読めば、芋づる式に他の本も読みたくなるはずです(笑)
これからも、どんな芋づるの端っこを花風社さんが掴まれるのか、楽しみにしています!
次の10年は、治す10年へ。

http://www.amazon.co.jp/%E8%8A%8B%E3%81%A5%E3%82%8B%E5%BC%8F%E3%81%AB%E6%B2%BB%E3%81%9D%E3%81%86-%E7%99%BA%E9%81%94%E5%87%B8%E5%87%B9%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%8C%E4%BB%8A%E6%97%A5%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8-%E6%A0%97%E6%9C%AC%E5%95%93%E5%8F%B8/dp/4907725930/ref=pd_bxgy_14_img_y
芋づる式に治そう!発達凸凹の人が今日からできること
栗本啓司、浅見淳子 著 花風社

コメント

  1. 発達障がい者にソーシャルスキルは有効かと尋ねられたことがあります。発達障がい者の特性は個々人によって異なりますし、またその個々人がかかわっている家庭・社会環境も異なっている上、それぞれの環境がそれぞれの変化をしていきます。こうしたことを考えていくと「ソーシャルスキル」には限界があり有効だとはいえないと、単に障がい者の母である素人の私にも思えました。

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  2. 白崎の母さんへ

    さすが白崎の母さん!
    娘さんと一緒に生活していて、その様子を見ているとわかりますよね。
    でも、まだまだソーシャルスキルは流行の中心です(;^ω^)
    どうやって、すべての状況への対処法を教えるのでしょうかね~。

    娘さんを見ていてもわかると思いますが、同年代と比べてゆっくりかもしれませんが、少しずつ社会性や対人面での成長が感じられていると思います。
    心身が安定し、良い状態に整えられれば、脳に余裕ができ、その余裕が出て部分で成長していくのだと考えています。

    あくまで「ソーシャルスキル」は、対処療法。
    なんだか「ソーシャルスキルさえやれば大丈夫」みたいな空気ですが、かなり複雑で流動的な状況に対応できるようになるには、その人が持っている成長する力を引き出すことが近道だと考えています。

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