2020年3月26日木曜日

【No.1035】触覚=受動的+(能動的⇔固有受容覚)

『触れる主体は誰か?』というブログを読んだ方から、ご質問がありました。
「本人があまり身体を触らせてくれないので、寝ているときに、マッサージをしているのですが、それって皮膚を育てることに繋がりますか?」というものです。
実は、こういったご質問は、他の方からも多く受けることがあります。


本人が寝ているときに、マッサージをする親御さんは少なくないように感じます。
親御さんに触れられること、穏やかな揺れや刺激は、眠っていたとしても、本人の心地良さ、安心につながると思います。
寝ているときだって、脳は絶えず動いていますので、皮膚から受け取った刺激を脳に運び、それが神経発達につながることもあるでしょう。
ですから、本人が寝ている間の皮膚刺激は、発達につながる可能性はあるといえます。


しかし、一方で、何を育てたいのか、何が本人の発達課題なのか、という点に注目する必要があるのです。
触覚と言えば、すぐに思い浮かぶのが、痛みや熱さ冷たさだと思います。
どちらかといえば、受け身の感覚であり、刺激のセンサーという面が大きいと言えます。
でも、私達が得る感覚刺激には、モノの大きさ、重さ、手触り、バランスなど、能動的に得る情報があり、検知するといった面もあります。


触覚には、受動的に得る感覚と、能動的に得る感覚がある。
そして、その能動的に触れることで得る感覚には、触覚だけではないのです。
ここが今日のポイント。
モノに触れることで、その形態を検知すると同時に、筋肉や腱などが刺激され、自分の姿勢や運動状態が検出されます。
これが固有受容覚、自己受容覚といわれるものです。


つまり、寝ている間のマッサージは、受動的に得る感覚を刺激し育てているのであって、能動的に得る感覚と、それに伴う固有受容覚は刺激されていないし、育たないということ。
図にすると、触覚=受動的+(能動的⇔固有受容覚)。
論理的に考えると、こういった図式になるのだと思います。


しかし、私個人的な経験、意見としましては、受動的に育つ触覚の部分も、ただ単に受け身的に刺激を受けているだけでは育ちが甘い、ゆっくりだと感じますし、考えています。
確かに、皮膚が過敏、皮膚で感じられる刺激の幅が狭いお子さん達がいます。
そういったお子さん達には、安心感がある親御さんからのスキンシップ、マッサージが育む面が大きいと思います。
でも、過敏なお子さんも、触れられるのは嫌だけれども、自分から触れていくことでは大丈夫な子も多くいます。
そこには、眠っている間の触覚刺激とは異なる意味や意義があるように感じます。


また、触覚は、1つの感覚として捉えない方が良い、といいますか、固有受容覚とセットで考える方が、子育て、発達援助では良いのでは、と考えています。
触覚に発達の課題がある子のほとんどが、姿勢や運動、自分という実態感の薄さを持っています。
ということは、何かに触れる感覚と、自分の姿勢や運動を感知する感覚とは、強い関係性があるし、影響し合っている感覚同士なんだと思います。


ですから、どっちかを育てるのではなく、どっちも育てる、という視点が、この感覚同士には必要な視点のように感じるのです。
私の発達相談でも、こういった課題があるお子さんに対しては、能動的に触れることを提案していますし、実際、能動的に触れる機会、遊ぶ機会が増えると、一気に両方の感覚が育っている姿を見ます。
あまり、「どっちかの感覚だけ育った!」という方にはお会いしたことがありません。


「日中できない分、せめて寝ている間だけでも」という親心は、とてもよくわかりますし、それ自体を否定するわけでも、意味がないと言うつもりもありません。
でも、考えるポイントは、なぜ、日中は触らせてくれないのか、触られるのは嫌だけれども、自ら触ることはなにかないのだろうか、という視点だと思います。
もしかしたら、自ら触れているモノ、感覚を、少しずつ広げていく、バリエーションをつけていく、という方向性のほうが、より良い発達へと繋がるのかもしれません。


また、寝ているまに触れることも、幼少期なら自然ですし、問題ないのかもしれませんが、ある程度、大きくなったときに、たとえ我が子とは言え、寝ている間、本人の同意がないままに、一方的に触れることは良いのだろうか、という問題もあります。
たとえば、小学校高学年の男の子の寝室に行って、母親が身体に触れる…。
これはアウトだと私は思います。
いくら発達のためとはいえ、同意がないのに他人の身体に触れることはいけません。
定型の子にならしないでしょうし、反対に我が子が同意のないまま、勝手に他人の身体に触れたら、全力で注意するはずです。


「本人があまり身体を触らせてくれないので、寝ているときに、マッサージをしているのですが、それって皮膚を育てることに繋がりますか?」というご質問に対する私の答えは、「皮膚はちょっと育つ。でも、触覚全体を育てたいのなら、固有受容覚を育てたいのなら、お子さんが能動的に触れる活動を通して育てられることをお勧めします」というものです。
胎児期の感覚の育ち、発達から見ても、触覚と固有受容覚は密接な関係にあることがわかります。


是非、我が子が何を能動的に触るのか、その触っているものから幅を広げてあげられないか、という視点で考えていただければ、と思います。
背中など、自ら触れるを連想しにくい部分であったとしても、背中を触られるのと、自ら背中を押しあてるのとでは違います。
自分の意思で、背中をモノに当てるのなら、それも能動的な触覚だと私は考えています。

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