強みを活かせる仕事に就き、一人前を目指す

よく就労支援では、「強みを活かせる仕事を目指そう」などと言う。
しかし、実際の様子を見ていると、強みと得意、または好きなことが混同しているのではないか、という疑問をもってしまうことが少なくない。

例えば、パソコンいじりが好きで、操作に詳しい人がいるとする。
この人にとってパソコンは好きなことであり、知識が豊富ならそれは得意なことと言える。
じゃあ、「この人の強みは?」といったら、それは表面的なことではなく、資質の部分のことを指す。
パソコンに関してなら、何時間でも集中できるのなら、この集中力が強みであり、難しい場面に出くわしても、自分でとことん調べ、答えを探求するのなら、この粘りが強みになる。
また、莫大な量の中から、ほとんどの人が気づかないような間違いをすぐに探すことができるのなら、この間違いに気が付くことが強みとなる。

学校や家庭では、強みだけではなく、得意や好きなことが多く用いられている。
得意なことは、自尊心を高め、好きなことは集中力を高める。
でも、これは自分だけの視点。
仕事に関しては、自分からの視点だけではなく、他者の視点が大事になる。
つまり、いくら自分が「得意なこと」「好きなこと」と思っていても、雇い主やお客さんが満足できる基準に達していないものは、仕事としてなりたたないということ。
学校や家庭の中では、自己評価で良かったが、仕事に関しては相対評価になることは押さえておく必要がある。

他人に負けないくらいのレベルの得意なこと、好きなことなら言うことはない。
でも、実際にこんなレベルの人は、ほとんどいない。
ほとんどいないから、こういったレベルの高い人たちのことを「天才」と呼ぶ。
天才ではない大多数の人は、資質の中にある強みを活かせることに注目しなければならない。
資質の中にある強みを活かせる仕事なら、仕事をしながら成長できるから。
その仕事の天才にはなれないかもしれないが、一流になれる可能性はあるし、一人前にはなれるだろう。

「パソコンが得意なら、コンピュータ関係の仕事が良いね」
「絵が得意だから、イラストレーターなんてどう?」
なんていうアドバイスに耳を傾けてはいけません。
パソコンが得意な人も、絵が得意な人も、世の中にはごまんといる。
その中で、そういったことを仕事にできるのは限られた人であり、みんな雇い主、お客さんから認められるものを形にできる人。
ほとんどの人は、仕事にはならず、趣味で落ち着く。

得意なこと、好きなことを仕事にできたらよいかもしれないが、それだけでは働き続けることはできません。
働くというのは、報酬を得るだけのものを提供できるかにかかっています。
ですから、自分の強みを活かし、その仕事の中で成長できるものを選びましょう。
パソコンの知識、技能の高さは、福祉職員や進路指導の先生にはわかりませんよ。
絵のうまさは、絵を描く仕事をしている人にしかわかりませんよ。
自分の持っているスキルが世の中に通用するものなのか、どうかは、その道のプロに聞きましょう。
それ以外の人が言う評価は、ただの感想でしかありません。
支援者は、その人の強みを見つけ、評価するのが仕事であり、パソコンや絵のうまさを評価することはできませんのでご注意を。

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