2020年10月8日木曜日

【No.1109】口は愛着の入り口

出張に行くと、普段よりもタンパク質を欲するのが分かります。
その土地のものを、地元の人が行くようなお店を目指していくのですが、どうしても身体が「タンパク質を!」と叫ぶのです。
出張は現代版の狩りですから、私の中に流れる狩猟民族の血が騒がしくなるのでしょう(笑)
コロナの3ヶ月以外は、月に2回のペースであちこちに行っていましたが、体調を崩すことがありませんでした。
それは身体の声に従っていたことも大きな要因だったと思います。
急激に乾燥し始めた近頃は、温かい汁もの、ネギ類、柑橘系が美味しく感じますね。


私は今までずっと自分が食べたいものを食べて生きてきました。
なので、どの人も同じような感じだと思っていたのですが、そうではない人も少なくないようでビックリしたことがあります。
昨年からの相談で、子どもが「プロティンを飲んでくれない」「サプリを口から出す」という話を伺います。
体内に入れるのは、親御さんではなく、子どもさん自身です。
ですから、その子どもさんが飲みたくないということは、飲む必要がないものだと私は思います。
大人よりも、感覚が鋭く、本能に近い子ども達なのですから、何かを察したに違いありません。


以前、ある親御さんに注意したことがあります。
嫌がっているお子さんに飲ませようとしていたので。
有名な先生が一日の目標量を示したのかもしれません。
でも、それにとらわれてしまって、目の前の子どもが見えなくなってしまっているのは問題です。
食は、愛着形成にとって重要なポイントになるのです。


神経発達症の子ども達は、胎児期から出生後すぐの段階で感覚系に未発達があるために、親御さんからの愛情をそのまま受け取ることが難しい場合があります。
本来、心地良いはずの身体接触が、感覚器の未成熟によって受け取ることができなかったり、反対に不快な刺激として受け取ってしまったりすることがあります。
そのため、親御さんが愛情たっぷりに育てていたとしても、子ども側の感覚の状態によって、うまく愛着形成がなされていかないのです。
神経発達症の子ども達には、運動や感覚だけではなく、愛着形成の遅れも見られることが多々あります。
ですから、愛着形成も注意してみていく必要があるのです。


そういった子ども達にとって、愛着を育てていく関係性にある親御さんから、自分が本能的に察して食べないと判断したものを食べさせられる…。
食は命と直結することですので、そのインパクトは小さな子どもにとって想像以上に大きなものになるでしょう。


胎児はへその緒、胎盤を通じて母体と繋がっています。
まさに母子一体の状態ですので、母親の愛情はストレートに伝わり、ここから愛着形成の始まりです。
出生後は、母体と離れますが、授乳でおっぱいと口が繋がり続けます。
お互い愛着と信頼があるから、無防備に繋がっていられる。
そして口から食べ物を食べる時期へ。
生まれて初めての飲みこむという行為は、信頼なくてはなし得ません。
動物が獲ってきた食べ物を子ども達に分け与えるのは、哺乳類に見られる愛着の姿であり、私達の愛着形成の原形です。


私は発達相談において、家族で一緒にご飯を食べているかを尋ねることがあります。
それは生きづらさを抱えている若者たち、特に愛着の課題を持っている人たちに共通していることがあるからです。
「家族で一緒にご飯を食べることはなかった」
「いつもバラバラに食事していた」
「みんな、食べるものが違っていた」
彼らの愛着形成の流れを確認している際に気がついたことです。
動物としての愛着形成、食べ物を囲み、一緒に食べる、分け与えながら食べる、そういった経験の乏しさがあります。
なので、そのような雰囲気を感じたとき、私は食事に誘い、同じ場所で同じメニューを食べるようにすると、彼らの表情、身体が弛むことがあります。


プロティンを飲む飲まない以外にも、食に関する相談は多くあります。
確かに、その背景には口や咀嚼の問題、嗅覚&味覚の課題などがあることが多いですが、一方で愛着形成の課題も観て取れることがあるのです。
食べられないことに意識が集中してしまい、親子共々、楽しく食事ができていないことがあります。
忙し過ぎて、インスタントなもので食事が終わっていたり、スプーンや箸の使い方を教え込もうとして訓練の場になっていることもあります。
子どもは、大人のことをよく見ているもので、大人が美味しそうに食べていると、自分も食べてみようとするものです。
逆に言えば、大人が食べないものを、先に食べてみせないものを、食べておいしそうにしていないものを、さあ、子どもに食べさせようとしても難しいと思います。


神経発達症の子ども達にとって、栄養は大事です。
しかし、栄養だけが大事なわけではなく、トータルで考えていく必要があります。
そういった部分にこだわるのは専門家の仕事。
総合的に、子どもの発達、生活、人生を考えられるのが親御さんです。


食事に関して、偏食や道具の使い方などで心配なことがあると、なんか全部だめみたいな親御さんもいます。
でも、食事の量が少なくても、食べられるものが少なくても、元気に遊び、動きまわっているのなら良いのではないでしょうか。
再三申し上げている「快食快眠快便」だって、「快食」「快眠」「快便」ではなく、すべてつながっているのです。
食べるから出るのであって、出るからぐっすり眠れる。
眠れるから、お腹が空くし、いろんなものが食べられるようになったら便の状態だって良くなる。
私が余計な点などを入れず「快食快眠快便」と続けて書いているのは、トータルで発達を、子育てを考えて欲しいからです。


食事は3度3度のことで、園などでも指摘されるポイントになるので、ナーバスになるのはわかりますが、基本は生きるために食べているということと、食べるのは子ども本人であること、そして何よりも食べる行為も運動であり、身体や感覚が育ち、整うことが大事で、愛着形成も関わっていることをもう一度、意識してもらえたらと思っています。
ASDゆえの偏食と言われていた子が、家族みんなで笑いながら食べるようにしてから、いろんなものを自ら食べるようになった、というエピソードもあります。
これから鍋が美味しくなる時期です。
家族みんなで食卓を囲み、わいわい食べるのも良いかもしれません。
身体と共に、心も温まるはずですから。
味覚同様、愛着も育っていきますね。




0 件のコメント:

コメントを投稿