2020年7月20日月曜日

【No.1085】「正しい診断が正しい治療に繋がる」という考え方

ある医師は、診断についてこのようなことを言っていました。
「医療が診断にこだわるのは、正しい治療を行うため。正しい診断が正しい治療に繋がると信じている」
この話を聞いて、なるほどと思いました。
確かに診断を間違えば、治療方針を間違えてしまい、患者さんに不利益を与えてしまいます。
ですから、治療方針を間違えないように、まずは正しい診断という考えなのでしょう。


日本において神経発達症の診断も、医療の範疇になります。
しかし、病気や他の身体的な障害とは異なり、客観的な正しい診断ができない状況です。
そうなると、「正しい診断が正しい治療」というのから、『正しい』の文字が消えてしまいます。
「申請が通りやすいように、症状を重く書いておきましたから」
「お母さんが受けたい療育、支援に合わせて、診断名つけておきますから」
「とりあえず、自閉症をつけておけば、今後も支援が使いやすいですしね」
こんな話は、しょっちゅう耳にします。
そういえば、数年前、北海道で聴覚障害を偽装し、障害者年金をだまし取っていたという事件がありましたね。
本人の状態ではなく、親御さんの希望や医師のさじ加減で診断が変わるとしたら、それは正しい診断ができているとは言えないでしょう。


医療の外から診断を見ていますと、治療ありきの診断のような気がしています。
「この地域には、こんなサービスが利用できるから」
「うちの系列の療育に通わせるためには」
そんな感じで、地域の実情、資源に合わせて診断がされているような印象を受けます。
ある地域では、どの子も同じ診断名で、どの子も同じパターンの療育、支援を受けていました。


こういったことに、私は大きな違和感を持ちます。
私は医療ではない診断のトレーニングを受けました。
欧米では心理士も診断ができますので、そういった方面からの勉強です。
その際、重点的に教えられたのが、その子を深く知った結果が診断名で、診断はより良い支援を創造するための入り口である、ということです。
神経発達が盛んな子どもさんなら、なおのこと、発達・成長と共に診断名が変わっていくのは当然のことなのです。
客観的なデータ化、数値化ができないのですから、状態の変化が診断名の変化になります。
ということなので、あまり診断名自体が重視されていません。


ところが日本は、いまもなお、診断名重視で、一度、診断名が決まれば、それに合わせて行政も、学校も、支援も一直線に連なっていくイメージです。
「医師がつけたものを、医師以外の人がくつがえすなんて…」などと言われます。
そりゃあ、脳波や血液検査などの医学的で、かつ客観的な診断ができるものに対しては否定するつもりはありませんが、そもそもが「"正しい"診断ができない」「状態の変化とともに診断も変わる」という属性のものなのですから、というか日本以外は医師じゃなくても診断ができるものなのですから、否定もなにもありません。
「"正しい"診断ができない」という点では、医師も、私のような支援者も、親御さんも同じなんだと思います。


そもそもが「正しい診断が正しい治療に繋がる」と言える類のものではないのでしょう。
"正しい"診断がなければ、"正しい"治療もありません。
あるのは、その子がよりよく育つアイディアであり、神経発達を後押しするアイディアです。
「この診断名には、この方法」と系統立てることなどできないのです。


一人ひとり症状や状態は異なります。
神経発達は日々、変化していくものです。
ですから必要なのは、ある決まった日に付られた診断名ではなく、今日、この瞬間の子どもを見る目だといえます。
同じ「自閉スペクトラム症」だからと言っても、状態も、発達の仕方もみんな同じではありません。


「アセスメントも、育てる方法も、寄せ集めである」というのが、私の考えです。
「大久保さんが学んだ学派はなんですか?流派は?師匠は?」などと訊かれることがありますが、特別「これ」というものはありません。
私の知識、知見は、今まで歩んできた道で学び、拾ってきたものの寄せ集め。
たぶん、1つの流派では対応できないでしょう。
神経発達は無限ですから。
療育でも、自分が学んだ流派を押してくる支援者は治せないのは、お子さんと流派が一致したときだけ効果があり、まさに運次第だからです。


人は、正しさを求めると系統や秩序を求めます。
神経発達症を正しく診断しようとすると、〇✖クイズのような診断基準、マニュアルが出来上がります。
正しい治療をしようとすると、同じ診断名は同じ治療という不自由さが生まれます。
しかし、神経発達症に正しい診断も、治療も存在しません。
あるのは、一人ひとりにあった育て方のみ。
寄せ集めたアイディアの中から、我が子にあった、自分にあったものを選び、最適な育ちを作り上げていくことこそが発達援助なのだと私は考えています。
よって、「正しい診断が正しい治療に繋がる」のではなく、「その瞬間を見ることが、より良い選択に繋がる」だと思います。




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