強度行動障害の人と関わって見えてきたこと

施設で働いていたとき、強度行動障害の人たちの支援に携わっていました。
各地から"強度行動障害"ということで入所されてきていましたが、そのほとんどの人たちが「作られた強度行動障害」であると感じていました。
「作られた強度行動障害」とは、本人の器質的な理由ではなく、今まで歩んできた環境の影響を受け、行動障害が作られてしまった、という意味です。

強度行動障害が作られる理由には、
①一貫性のない支援、行き当たりばったりの支援によって、本人の頭の中がぐちゃぐちゃになってしまったため
②反対に、適切な支援をまったく受けてこなかったばっかりに、誤学習が何重にも積み重なってしまったため
というような大きく分けて2通りの理由がある、と私は感じていました。
「強度行動障害がある」と言われて入所されてきた人たちの多くは、本人の評価に基づいた支援を行っていくと、徐々に落ち着きを取り戻し、生活に支障がないくらいまでになっていました。
また中には、入所された当日にすぐに落ち着き、「本当に強度行動障害がある人?」と思うようなこともありました。

自閉症の人たちに強度行動障害が多い理由は、視覚的に記憶したことは特に強く残り、消去することが困難、ということがあります。
「自閉症と知らずに子育てされてきた」「感覚の違いについて配慮されてこなかった」「他の障害と同じように療育されてきた」「自閉症の療育の仕方が、親御さんに教えられてこなかった」など、様々な理由から本人に適切な療育が届かなかった場合、適切ではない行動や自分なりの行動を身につけてしまいます。
その極端な結果として、"強度行動障害"と呼ばれるような状態になるのだと考えています。

行動障害がある人に対して、どのように支援を行っていけば良いのか?
それは一人ひとり違うので、一概に言うことはできません。
しかし、支援の基本的な考え方としては、
◎ストレスを支援の根拠にしないこと(ストレスは見えないため)
◎行動障害にばかり目を向けない(支援が進まなくなる。本人の強みを伸ばしていくという方向性)
となります。
*もちろん、精神科の薬を活用することもありますが、これはあくまで補助という考え方です。
多量の薬を飲めば、行動障害がなくなると言いますか、行動障害ができない状態までに持っていくことは可能です。
しかし、これでは「何のための支援か」「本人の生活の質はこれでいいのか」という疑問が出ます。
精神科の薬の力を借りている間に、環境の調整や本人への療育を行うことが第一です。

そして強度行動障害に関して、最後にどうしても書かなければならないことがあります。
それは、強度行動障害の人の中には、本人の器質として激しい感覚過敏や衝動性などを持っている人たちがいることです。
この人たちの話を保護者の方からお聞きすると、物心つく前から他の子ども(自閉症の子どもとも)とは違う行動が見られていたと言います。
とてもここでは語ることができないくらいのご苦労を、本人はもちろんのこと、家族も抱えてきたということがあります。
アメリカのノースカロライナ州では、自閉症の95%の人たちが地域で生活していると言います。
しかし、残りの5%の人たちは精神科の病棟で生活をしている。
このことを日本の強度行動障害を持つ人たちに当てはめることはできませんが、数パーセントの割合で、本人の器質的な要因から強度行動障害になる、ということがあるのではと考えられます。

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