2020年5月16日土曜日

【No.1065】4種類の動きを通して環境と繋がる

その子の発達を堰止めてしまう要因には「原始反射が統合されていない」、つまり、胎児期から1歳前後で役目を終える反射が残っていることが考えられます。
実際、子どもさんによっては、2歳を過ぎてもその反射が頻繁に見られていて、それが終わった途端、ググッと発達が前に進むということもあります。
ですから、発達に遅れがある子を見る場合、原始反射がちゃんと役目を終えているかどうかを確認しますし、その重要性をお伝えしています。
 
 
このようなお話をすると、「原始反射=赤ちゃんの運動」「原始反射を卒業するっていうことは、次の発達段階に移る」といったイメージを持たれる方がいらっしゃいます。
しかし、そうではありません。
お母さんのお腹の中にいるときだって、胎児は自分の意思で動いたり、学習したりすることがわかっています。
決して胎児だから、赤ちゃんだからといって、反射のみで動いているわけではないのです。
 
 
胎児、新生児、赤ちゃんの運動には、原始反射があり、呼吸等の無意識な動きがあり、うつ伏せに寝せると手足をバタつかせるような動きがあり、対象物に手を伸ばすなどの意識的な動きがあります。
大きく分類して、この4種類の運動を通して運動発達、脳の発達を遂げていくのがわかります。
ですから、発達相談において原始反射を確認することは大事ですし、親御さんならそこを育てていくのも大切ですが、他の動きについても確認する必要があるのです。
原始反射はわかりやすく、教科書通りの動きが見られますので、アプローチしやすく、また熱心に取り組まれている親御さんも多いですが、そこだけ育てばいいか、注目すればいいかという話でもありません。
 
 
胎児期からすでに上記の4種類の動きがみられるということは、環境との相互作用によって育つ部分が大きいという意味であり、そうやって発達するようにヒトはできているのだといえます。
なので、発達障害、つまり、発達に遅れがある子が「先天性の障害である」と言い切れないですし、彼らの発達の遅れを取り戻すには4種類の動きに注目し、育てていくことが有効だと考えられます。
「発達障害だからこそ、手が打てない、支援や理解しかない」ではなく、「発達に関わる課題だからこそ、4種類の動きを豊かにすることで治っていく」といえるのです。
 
 
発達障害の子どもたちに共通してみられるのが、バリエーションの乏しさです。
発達相談において私は、上記の4種類の動きをイメージしながら、それぞれどのくらい動きの種類があるかを見ています。
一見すると、運動発達に問題がないと言える子、赤ちゃんの運動発達において気になる点がなかった子でも、動きが単調で、いつも同じパターンで動いていたということがあります。
たとえば、「寝返りの仕方がいつも決まっていた」「その寝返りが変化していかなかった」「前に進むハイハイはしたけれども、後ろに向かうハイハイはしなかった」「立ち上がる一連の動作がいつも一緒」「走り方が単調」などです。
 
 
定型発達のお子さんの場合は、ハイハイ一つとっても、その動き方がバリエーションに富んでいます。
ということは、発達障害と言われるお子さん達への子育てのポイントは、動きの幅を広げていくことだと考えられます。
単に「寝がえりができればいい!」「ハイハイをやり直せばいい!」「走れるようになればいい!」という話ではないことがわかります。
もちろん、基本的な動作、定型である運動発達はできるようになることが基本ですが、そこからどうバリエーションを付けていけるかがもう一歩先に進んだ発達援助だと言えます。
 
 
このブログでも、実際の発達相談でも、私は子ども達の遊びの重要性、必要性を説いています。
これは私が自然派であるとか、意識高い系であるとか、私の趣味嗜好とかいう話ではありません。
一言で言えば、身に付けた基本動作にバリエーションをつけるには遊ぶこと、特に自然の中で全身を使って遊ぶことに勝る方法がないからです。
私が直接的な指導で、基本動作を身に付けさせたり、その方法を教えることはできます。
家の中で、療育機関で、基本的な動作のやり直しはできます。
しかし、決められた環境の中では豊かな刺激と動きを作ることができないのです。
 
 
胎児、新生児、乳幼児は、4種類の動きを通して環境と関わっていきます。
最初は無意識で行っていた運動が、意識してできるようになるのも発達。
意識してやっていたことを無意識でできるようになるのも発達。
コントロールできるようになった動きを組み合わせて、新たな運動ができるようになるのも発達。
子ども達は、自分の身体を通して、自ら動くことを通して、ヒトとして生きるための発達の土台を培っていきます。
動くことで環境とつながり、繋がった環境との間で動きを育て、発達にバリエーションをつけていくのです。
 
 
多くの子ども達と関わってきた中で私が感じるのは、発達障害の中核的な課題はこの動きの乏しさ、バリエーションの少なさである、ということです。
動きが限られていれば、当然、生活の中で、人間関係の中で、社会の中で、うまくいかないことが増えるでしょう。
これらは常に変化し続ける環境ですから。
自立を言い換えると、「変化に対応できるようになること」といえるかもしれません。
「あなたは変化に対応できるだけのバリエーションを持っているの?」が問われるのだと思います。
 
 
動きにバリエーションができるということは、臨機応変な行動ができるようになるだけではなく、獲得した行動と行動を結びつけ、新たな動きを生みだすこととつながっていきます。
それは脳をフル活用し、創造性のある豊かな人生を送ることにもつながっていきます。
そしてそのベースは、胎児期から始まる子ども時代の動きの獲得とそれに伴う脳の発達だと言えるでしょう。
ヒトは4種類の動きを通して環境とつながり、その環境の豊かさを受けて動きにバリエーションを、脳内のネットワークを作っていく。
 
 
原始反射の統合も、赤ちゃんの運動発達のやり直しも、基本的な動作の獲得に繋がるといえます。
でも、そこだけでは発達障害の子ども達の課題を解決したとはいえませんし、発達援助の入り口に立ったとしかいえないと思います。
子ども達が獲得した基本的な動作、動きを、どのように発展させてあげるか、どのようにバリエーションを作っていくか。
そのための環境づくりこそが、発達援助の中心だと考えています。
 
 
そう考えると、やっぱり育てていく中心はその子自身ですし、自然という変化に富んだ豊かな環境の中で遊ぶことが一番です。
自然で遊ぶには、自然に対処しなければなりません。
意識、無意識を問わず、自分が獲得した動きを総動員して、子は遊ぶのです。
自然で遊べるようになった子は変化に対処できる動きと脳を育てたと言えるでしょう。

 
 

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