2020年5月2日土曜日

【No.1057】自閉症"様"と自閉症

最近やっと「乳幼児期のテレビ視聴による問題」が研究結果として発表されました。
物心つく前のテレビ視聴が脳や感覚系への影響を及ぼすなんて当たり前の話で、現場レベルでは10年も、20年も前から指摘されていたことです。
今回の研究結果では、「テレビ視聴=ASD、ASDになるリスクが高まる」ということではありませんが、18か月未満の子どもがテレビを見ることによって自閉症のような症状が現れるとのことでした。


「自閉症の"ような"症状だったら、自閉症になるわけじゃないし、そこまで問題ないんじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、『ような』だからこそ大問題なわけです。
ここ数年で1歳代の診断なんていうのは当たり前になってきました。
私のところにも、1歳代のお子さんを持つ親御さんからの相談が増えています。
その1歳代で診断を受けた子、発達の遅れを指摘された子の多くは、「本当に自閉症なの?」という子ばかりです。
今後、症状が重くなり、固まってきて将来的に何らかの診断名が付く可能性がないとはいえませんが、それにしても診断を確定するには早すぎるし、症状も部分的に見られるかなっていう程度なのです。


そして共通する点として、0歳代からのテレビ視聴、スマホ、タブレット視聴とその時間の長さ。
上記の研究結果をそのまま引用すれば、早期からのテレビ視聴によって自閉症のような症状が出ている、とも考えられるのです。
もし、そもそもが自閉症ではなくて、障害ではなくて、早期からのテレビ視聴の影響で自閉症っぽい症状や行動が出ているとしたら。
でも、そういった背景があろうとも、現在の診断は基準に当てはまるかどうかなので、『ような』であったとしても行動が確認できれば診断がついてしまうわけです。
しかも日本の常識では、いまだに「障害は生来的なものであり、一生変わることがないもの」となっています。


ということは、そもそもが自閉症ではなく普通の子だったのに、乳幼児期のメディア視聴によって自閉症っぽい行動が出るようになっただけなのに、障害児として特別支援のレールに乗っけられる危険性があるといえます。
本来なら即座にメディア視聴を止め、自然な遊びや親子のスキンシップなどへ切り替えていけば、その症状が緩んでいくのに、「じゃあ、療育を始めましょう」と幼少期から人工的な環境へ誘われていくわけです。
そうなれば、遠ざけるべきメディア視聴が、「それで、その子が安心できるなら」という支援グッズの一つになって肯定されてしまう。
自然な遊び、同年齢との遊び、集団での活動が、一人の子として心身の発達に重要なのに、わけのわからない環境で大人と一対一で活動することとなる。
「早期から療育、支援を受ける子ども達は、どんどん症状が重くなっていく」というのは、もともとは一時的な影響だったものを、「生まれつきの障害」「障害は生涯変わることがない」という誤った認識、特別支援の世界だけの常識によって障害児として育てられてしまう、教育されてしまうことの表れでしょう。


早期からのメディア視聴、長時間のメディア視聴が、柔らかい子どもの脳と感覚、神経発達に影響を及ぼさないわけがありません。
乳幼児健診でも、メディア視聴の様子を必ず訊かれます。
なのに、発達障害専門の病院では、そこを尋ねられない、指摘されないのはどうしてでしょう。
反対に「子どもさんがそれで落ち着いているんなら」といって推奨する人すらいるくらいです。
同じ医師でも、こうも違うわけです。
その理由が「専門領域の常識=権威ある医師が言ったこと」であり、そのために現場とのギャップ、リアルタイムでの変化が難しいのかもしれません。


しかしそんなことはどうでもよくて、問題は自閉症"様"が自閉症として扱われてしまうことです。
自閉症"様"と自閉症とでは、その子の人生がまったく違ったものになってしまいます。
当然、親御さんの接し方、子育て、選択が変わってきますし、家族としての生活、人生にまで影響を及ぼします。
自閉症として育てられた子が、あとから「やっぱり違った」では取り戻せないものが大き過ぎます。
同年齢との交流、集団生活、同年齢の子ども達が一般的に味わうことのできた経験や経験。
それらをすべて失うことになります。
幼児期の、とくに同年齢の子との交流で得られる経験と刺激を、大人になって再びやり直そうとしても難しいといえます。
一人で行える退行なら大丈夫ですが、こういった幼児期の環境ゆえに得られるものについては、後からのやり直しが困難です。


「大久保さんに診てもらって治った」と言われる親御さんもいますが、ほとんどのお子さん達は治っていません。
治るも何も、そもそもが自閉症ではありませんし、本来の姿と発達の流れに戻っただけです。
完全な自閉症(?)というものがあって、それを治したのなら崇められても良いかもしれませんが、私のところにいらっしゃる子の大部分は一時的な影響で自閉っぽくみえたり、発達の遅れが出ているだけです。
なので、影響を及ぼしているものを遠ざけたり、除いたりしていけば、まずそれ以上悪くなることはありません。
そしてそこから定型の範囲、元の発達の流れに戻るには、悪影響を受けていた期間にやり残していたこと、発達が滞っていたところを育て直していく、環境を整えて必要な刺激を確保することです。
ですから幼い子の方が早く戻りやすく、年齢が上がるにつれて、障害児として教育された期間が長くなるにつれて時間がかかるわけです。


それにしても、乳幼児健診で必ず訊かれる「メディア視聴」について、どうして発達障害専門では尋ねないのでしょうか。
1歳とか、2歳とかで診断名を確定してしまうよりも、「ちょっとテレビを観る時間を減らしてみましょう」といえないのでしょうか。
メディア視聴に関わらず、子どもの神経発達に影響を及ぼすリスク要因は具体的に明らかにされています。
ですから、そこに「メディア視聴」が加わっただけ。
そういったリスク要因を確かめることこそ、発達障害の専門家に求められることだと言えます。
そういったリスク要因が見当たらないとき、リスク要因を排除していっても改善していかないとき、初めて診断名という話になり、支援を受ける、療育を受けるという選択肢が出てくるのだと私は考えます。


最初から「待ってました」と言わんばかりに、1歳、2歳、3歳の子ども達にバンバン診断名をつけていく。
一度診断名が付けば、自動的に特別支援のレールの上を歩き始めるシステムが出来上がっている日本では、人生の転機が生まれて数年のうちに、親になって幾年も経たないうちにやってきます。
本当に馬鹿げた話だといつも思いますが、それが現実です。
今はちょうど診断もストップしている時期。
この数か月、1年、2年のうちに、本来の姿、発達の流れに戻っていく子ども達が増えていくことを願っていますし、私は絶好のチャンスだと思っています。




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