2019年9月29日日曜日

『発達障害でも働けますか?』を読んで

就職に関する相談では、ほとんどの方が「発達障害、アスペでも働けますか?」「コミュニケーションが苦手なんですけど、働けますか?」というようなことをおっしゃいます。
中には「まだ一回も働いたことがないのですが、働けますか?」という相談もあります。
さらに、こういった言動は、本人からだけではなく、一緒に相談に来られた親御さんからも聞かれるのです。


こういった発言が、本人、親御さんから多くあるというのは、それだけ否定されることが多かったのだと想像します。
「発達障害があれば、一般就労は無理」
「自閉症は、コミュニケーション力が求められる仕事はできない」
「一般就労で無理すると、二次障害になる」
「働くことだけが人生じゃない」
社会に出ようとすると、急に“ないない”だらけの支援になる。


学校を卒業するまでの間は、本人ができるように、本人が失敗しないように、支援という名の接待のもとで、やれること、やりたいことをやり、一方でやれないこと、やりたくないことは「やらなくていい」と言われたり、やる機会さえ貰えなかったりした。
ですから、一般の人が就職活動する以上に、仕事、働くこと、社会が怖く見えてしまう。


経験、体験していないことを想像するのが苦手。
そのため、どうしても近しい人の情報をそのまま受け取り、偏ったイメージを持ちやすい。
だからこそ、「発達障害でも働けますか?」というような相談を受けると、近しい人から「発達障害を持つ人は働くのが難しい」と言われたのだと思います。


支援ミーティングなどに参加すると、学校の先生や相談員、カウンセラーなどの人達から、「その仕事は難しい」「一般就労は無理だろう」などという発言が聞かれます。
本人が一般就労を希望しているのに、採用試験すら受けさせるのを止めさせようなんてザラです。
一般就労できるかどうか、は先生や医師、支援者、専門家が決めることではありません。
採用を決めるのは、その企業の人。
こういった専門性を謳った非常識なやり取りが、今日もどこかでなされているのでしょう。


支援者の中には、福祉的就労に持っていくことで評価を得たり、次年度の運営費を得られたりするために、一般就労を阻む人達もいるのは確かです。
でも、ほとんどの支援者、学校の先生たちは、良かれと思って、一般就労を止めているように感じます。
就職して、仕事場で不適応を起こし、二次障害になったという話から、想像を膨らませて。
本人に辛い想いをさせないために、福祉的就労を勧める人達がほとんどだといえます。


教育も、福祉も、医療も、民間の要素よりも、公務員的な要素が強く出る仕事だと思います。
営業してお客さん、契約をとってくるような仕事ではありません。
毎年、一定人数のお客さんが来るのは決まっているので、それに対して、一つずつ対処していく。
民間ほど、質や量にこだわらない。
だとすると、どうしても大多数の民間企業の働き方、空気感に実感が伴わず、疎くなってしまいます。
意地悪な言い方をすれば、民間企業のような働き方が合っていない人、好まない、馴染まない人が、当事者の周りを固めているので、ネガティブな情報に偏りやすいというのもあると思います。
福祉系の大学、専門学校を出て、すぐに就労支援、相談窓口をしている人もいるくらいですし。


私が相談を受ける中でも多く聞かれる「発達障害でも働けますか?」という質問。
まさに、そのまま、それに答えてくれる本が、花風社さんから出版されました。
もちろん、これは「Yes」「No」といった単純な回答という意味ではなく。


就職に関する相談は、まず誤学習や偏った認識を崩すことから始まります。
「コミュニケーションが苦手なんですけど」「体力的に不安なんですけど」「ちゃんと働ける自信がないんですけど」
そういった本人の発言一つ一つに対して…
「どんなコミュニケーション、人との関わりが苦手なの?」
「その苦手さは、発達障害だから。それとも経験不足?失敗した経験があるから?」
「希望している仕事は、どの程度、コミュニケーション力が求められるの?」
など、とにかくツッコミを入れながら、どこが事実で、どこが想像か、思い込みかを明確にしていきます。
「〇〇さんは、その企業を背負って立つような立場ですか?」
「新人の内から失敗しないことを求める企業はないですよ」
「そのレベルは、仕事に必要なレベルではなく、お笑い芸人のようなコミュニケーションレベル」
ときに、妄想ぐらいに膨らんだ仕事感を否定するのも必要になります。


『発達障害でも働けますか?』の中では、元営業マンで、現臨床心理士として働く人達の支援に携わっている座波淳氏が、明瞭に「仕事で求められることは」「働くために必要なことは」を説明してくださっています。
多分、この本があれば、就職に関する相談の一回目は省くことができます。
誤学習、偏った認識も座波さんの説明を読めば、一発で理解でき、自ら軌道修正することができるはずです。
支援者に相談するより、自らで改善できる方が、何百倍もその人の未来に繋がる素晴らしいことですので、どんどん本を勧めて、相談の回数を減らそうと思っています。
それくらい「働く」をど真ん中に持ってきた自己解決に繋がる著書だといえます。


同時に、子育て中の親御さんにとっても、その方向性を定める際に、必要な“子の未来”を見せてくれる貴重な著書だと思います。
我が子を見ると、まだまだ働くのは先に見えますし、そもそも働く姿すら想像できない親御さんが多いはずです。
だけれども、この毎日の子育てが、将来の仕事、自立へと繋がっているとわかると、より一層前向きな気持ちで、お子さんと関われるようになると思います。


親御さんの多くは、働いた経験がある人、今も働きながら子育てをされている人。
だけれども、初めての子育ての上に、「発達障害」がプラスされると、どうしても自分が経験してきた育ち、学校生活、仕事と分離して捉えがちです。
「そんなこと、普通の会社では許されないよな」と思えるようなことでも、発達障害という冠がつくと、浮世離れした支援者の話が正しいように思えてくる。


「支援者は、なんでも知っているわけじゃない。だって、民間で働いたことが“ない”し。学校で教えたこと“ない”し。この子の子育てをしたことが“ない”し。この子の家での生活を見たこと“ない”し」
いざ、社会の中に飛びだしていこうとすると、決まって聞かれる“ないない”の支援者達の声。
でも、本当に一般企業で働け“ない”のは、発達障害の当事者ではなくて、支援者なのかもしれない。
そんな連想を助けてくれる著者の座波さんのお話。


発達障害がある人達も、一般企業の中で活き活きと働き、成長し、キャリアを積み重ねていく人達が多くいます。
そういった姿、エピソードを、座波さんが理論を通して説明されています。
エピソードを裏付けする理論、情報に溢れた『発達障害でも働けますか?』
若者、成人した人たちにとっては、自己プロデュース、自分で軌道修正するために。
子育て中の親御さんにとっては、子の将来からみた今をより良いものにするために。
仕事、自立を真剣に考えている方達に是非、手に取っていただきたい書籍だと思いました。


 
 

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