2019年9月20日金曜日

発達段階に応じた親子の位置

自閉症や発達障害の子どもさんの中には、まるで「霧の中にいるみたい」というような雰囲気の子もいます。
同じ空間に居るんだけれども、私達のことが見えていないような。
他に子ども達が一緒に遊んでいるんだけれども、一人で黙々と遊んでいるような。
見ているようで見ていない。
聞いているようで聞いていない。
そんな様子から、その子の周りに霧がかかっているような印象を受けます。


目が見えないわけでも、耳が聞こえないわけでもない。
それに興味がある言葉や物があれば、自ら注意を向けることができる。
となると、「人に意識を向けさせよう」という想いが出てきます。
声がけしたり、身体を触ったりして、まずは自分の方に意識を向けてもらおうとする。
そんなとき、自然と子どもの正面に、自分の身体があると思います。


ドラマでもそうですし、実際の療育場面、家庭生活でも、子どもさんの前に立って、何度も名前を呼んだり、肩をゆすったりする姿を見かけます。
相手の正面に位置することが、一番視界に入りやすいという考えもあるでしょうし、「話をするときは正面で」という沁み込んだ教えもあると思います。
でも、子どもは、正面に立った相手のことを見ようとしない。
遊んでいる最中などは、そんな相手をどかそうとすることすらある。
それを見て、親御さんは悲しみ、支援者は更なる促しを展開していく。


結論から言えば、無理やり霧の中から出そうとしてもダメ。
霧の中にいたとしても、まったく周囲の状況が分からないわけではありません。
ですから、霧の外が「怖いもの」だというイメージを植え付けることにもなりかねないのです。
過去に強い促しを受けてきた子どもさん、若者は、周囲の状況がはっきりわかるようになったあとでも、環境や人に対する不安を抱えていることがあります。
良かれと思った行為が、心の傷として残り続けることも。


やはり大事なのは、未発達の部分、発達のヌケを育てていくこと。
まだ周囲の状況、環境、情報を自然とキャッチできない状態ですので、それらがラクに捉えられるようになるくらいまで、身体、感覚を育てていく必要があります。
イメージとしては、空間の一部であった自分を切り離していく感じ。
未発達やヌケが育つと、自分という存在がはっきりしてきて、環境との位置取りがうまくできるようになります。
同時に、掴まえれる情報が自分を中心に広がっていきますので、自然と周囲に、人にも意識が向けられるようになるのです。
霧の中から出すのではなく、霧が晴れていくのを育てながら待つ。


そうはいっても、共に暮らす親御さんなら、愛する我が子だからこそ、親子の交流、伝えあい、分かり合えるその瞬間を想い、味わいたいと願うのは当然だといえます。
ですから、私は「親子の位置を工夫されてみては」と提案しています。


正面というのは、一番分かりやすい関係性のように感じます。
でも、正面で、しかも、“やりとり”となりますと、発達段階からいえば、後半になります。
対面してやりとりができるようになるのは、1歳から2歳にかけてくらいでしょう。
もちろん、子どもさんによって異なりますが、霧の中にいるような雰囲気を持つお子さんは、それよりも前の段階に発達のヌケがあることが多いです。
よって、子どもさんの発達の準備から言えば、まだ準備が整っていない段階の関わりであり、両者のバランスが悪い、といえます。
となると、お互いにとってストレスになります。
ちなみに、どんな活動、能力にしろ、「促す」という雰囲気が出る時点で、発達段階に合っていないことをやっている、と考えられます。


子どもさんの状態、発達段階によって、心地良い位置も変わると思います。
「正面がダメだから、何をやってもダメだ」などと思う必要はなく、意外に、横に並んだら意識が向くようになった、交流が生まれた、なんてこともあります。
当然、後ろから関わるのが良い子もいますし、親御さんが子どもさんを背中から抱きしめ関わると、意識がはっきりするような子もいます。
背中へのアプローチは安心とつながりますし、何より母子一体の胎児期を連想させますので。


この位置取りの話は、親子の遊び方に繋がります。
たとえば、砂場で遊んでいるとき、その一人遊びをどう発展させていくか、次の発達段階へと育んでいくか。
正面で、斜め前で、横に並んで、後ろから。
積み上げている砂の山に、自分も砂を盛っていくか、子どもと同じような山も自分も作るか、スコップを共有するか、子どもが使っているスコップを手で一緒に持つか。
同じジャンプをするにしろ、手を持って正面で跳ぶか、横で跳ぶか、抱えて跳ぶか、では意味合いが違ってきますし、刺激を受け取る子どもさんの感じ方も違ってきます。


発達とともに、親子の関係性だけではなく、位置関係も変わってきます。
上手な親御さんは、その時々で、我が子が心地良い位置、分かりやすい位置へ、自然と身体をずらしています。
同じく支援者も、発達段階に応じて位置は変えますし、考えていないようでも「位置取り」に注意し、こだわり関わっています。
会話をするとき、遊ぶとき、勉強を教えるときなどに応用できる視点ですので、子どもにとって心地良い位置を探ってみると良いかもしれませんね。

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