『藤家寛子の沖縄記:治ってよかったの旅』(花風社)を読んで

昨晩、更新された藤家さんのブログを拝見し、新刊が発売されたことを知りました。
そして即効で購入!
Kindle版、電子書籍の良い面は、このように読みたい本を、出版された瞬間に読むことができることですね。
全国どこにいても、「時間の差が生まれない」というのは、「住んでいる場所に関係なく治していけるんだ」という花風社さんのメッセージを連想します。


一方で、今回の新刊は、「時間の差」「時間の移り変わり」を強く意識する内容でした。
今年の5月に沖縄に行かれたときのお話を軸に、最初に沖縄に行かれたときのお話、学校時代、闘病していた頃のお話、作業所から一般就労、そして現在のお話とを結びながら、私達読者に「時間の差」を感じさせてくれます。
時間の差とは、つまり、治っていくまでの経過、治ってからも、さらに治り続けていく時の流れです。


私も、ある程度の経験を積みましたので、どのくらいで変化が出てくるか、どのような順序で発達していくのか、本人の発達の流れを見て、将来の姿をイメージすることができます。
そういったお話を、親御さんにしますと、皆さん、喜ばれ、希望を感じられる方もいます。
でも、その喜び、希望は、朝の占いで「今日の〇〇座が一位!」というレベルなのです。
私が、今後いくら経験を積み、発達の流れが読めるようになったとしても、朝の2分間の占いから脱することはできません。


私には、ご本人や親御さんに、心からの希望を与えることはできません。
しかし、それができるのは、当事者の方の声であり、体験であり、その人が一生懸命歩まれてきた時間の流れなのです。
特に治っている方のお話は、今まさに治る道を歩まれている子ども達、親御さん達の内面、内側に届く希望です。
だからこそ、今回も私は藤家さんの本を読まれることをお勧めします。
藤家さんの本、文章、メッセージは、内側を響かせるパワーを持っているから。


藤家さんの本は、すべて読みましたし、持っています。
最初の頃の本と比べると、文章から伝わってくる雰囲気が全然違います。
文章からも、治っていることが伝わってきます。
しかも、どんどんまろやかに、伸びやかに、楽しさが伝わってくる文章に変わっています。
それは、今もなお、治り続けているから、そしてご自身の資質が磨かれ、それを人生、社会のためにどんどん活かされているからだと思うのです。


親御さんに「治る」話をすると、治った姿、ゴール、基準があるように思われる方がいらっしゃいます。
でも、「はい、この症状とこの症状が見られなくなったから、治りました」というような決まった姿があるわけではありませんし、症状がなくなり、一般の人と同じような状態になったら終わりというわけでもありません。
治ったあとも、治り続ける。
そんなことを藤家さんは教えてくれているように感じました。


ヒトは、生命が尽きるその瞬間まで変化、発達し続けます。
「治る」というのは、本人を苦しめ、生きづらさを生んでいる症状を治していくことを指すのかもしれません。
でも、そこがゴールではないのは、発達障害のあるなしに関わらず、みんな同じです。


多くの人間が、食事や生活習慣の改善を目指したり、より良く働けるよう学んだり、考えたりしていきます。
健康も、仕事も、人生も、これがゴールということはなく、生涯をかけて、より良く変わっていこうとします。
子どものときのような盛んな神経発達は起きないかもしれないけれども、より良い発達を望み、行動しているのです。


そのように考えると、治ったあとも、治り続けるのは、自然なことのように思えてきます。
どんどん良い変化が起きてくる、休むことなくより良く発達していく。
ですから、生きている間、ずっと治り続けられる姿が、目指すべき姿なのかもしれません。


今、発達障害を抱えている子どもを目の前にしますと、「すぐに治さなければならない」「早く治さなければならない」と思われる親御さん達が多いと思います。
でも、藤家さんの歩まれた“とき”からは、「大人になっても治り続ける」「子ども自身が、大人になって治し続ける」という心地良さを感じられるはずです。
「この子も、大人になって、自分自身で治していくよね」
そう思えると、今の子育てに伸びやかさが出てくるように思います。


藤家さんとは、ほぼ同世代で、私も『あぐり』は毎朝、熱心に見ていましたし、『ちゅらさん』は続編2,3,4のDVD、ゴーヤーマンのフィギアも持っているくらい好きでした。
BSで朝観てから、登校する毎日(笑)
『君の名は』『おんなは度胸』くらいから記憶アリ。
同じ時代を生きる方として、私にとっても元気や頑張る意欲、刺激を頂ける存在です。
沖縄のような温かい空気が漂う、クスッと笑えて、エネルギーを頂ける新刊でした!
高校の修学旅行以来、沖縄に行っていないので、私も旅行したくなりました。


 

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