2018年3月20日火曜日

「障害」という言葉に引っ張られる、すり寄っていく

口癖のように、「この子はアスペルガーだから」と言う親御さんがいました。
友達とケンカしても「アスペルガー」
部屋の片づけができなくても「アスペルガー」
学校のテストの点数が悪くても「アスペルガー」
なんでもかんでも「アスペルガーだから」と言っているその言葉に、悪意や軽蔑といった雰囲気はありませんでしたが、長年言い続けていたためか、まるで日常会話に出てくる単語の一つのように自然と口から出ている印象でした。


お子さんにお会いすると、育て直しが必要な発達段階があることがわかりました。
でも、その抜けている発達段階も少しずつ育ってきている雰囲気がありますし、何より発達のヌケのわりに現実で困っていることが大きい気がしました。
ですから、最初に親御さんと約束をしたんです。
「アスペルガーと言うのをやめてください」と。


私は言葉や雰囲気に引っ張られることがあると考えています。
別の人ですが、「順調にいっていても、数か月ごとに落ちてしまう」という相談を受けたことがあります。
そして、その“落ちる”を掘り下げていくと、相談機関に行くと落ちることがわかってきました。
別にその相談機関がヘンなことをやっているというのではありません。
むしろ何もしていなくて、ただ相談が終わると次回の予約が決まるから通っていただけで、内容もただ近況を話すだけの雑談みたいなものだということでした。


「日頃、自分が障害を持っていることを自覚しますか?」という私の問いかけに、「できないことがあって落ち込むことはあるが、自覚することはほとんどない」という返事がありましたので、相談機関という雰囲気に引っ張られているのだと直感しました。
きっとこの方は、障害を自覚するために相談機関に行っている。
相談機関に行ったあと、落ちてしまうのは、日頃意識しなくなった“障害”が意識化されることで、その障害を持った自分という姿に近づいてしまうからだと考えました。


でうすから、「その相談機関に通う意義や必要性を感じられていないのなら、通うのを止めるのも一つの手だと思います」と伝えました。
そこから連絡が途絶えましたが、半年くらい経ったあと、「落ちることがなくなった」と連絡がきました。
もちろん、別の要因があったかもしれませんし、たまたまだったかもしれませんが、障害を持った自分ではなく、若者の一人として苦手なことにも挑戦しながら自分の人生を頑張っていこうとする意思が伝わってきました。


冒頭で紹介した親御さんは、あれから約束を守ってくださり、「アスペルガー」という言葉を言わなくなりました。
すると、子どもさんもすっかり落ち着き、心身共に成長されました。
親御さんも、「苦手なことが多い子だけれども、少しずつ育てていけば大丈夫」と思えるようになったと言っていました。
知らず知らずのうちに、「アスペルガー」という言葉に子どもも、親御さんも、すり寄っていっていたかもしれないと思いました。
学期ごとに「支援級を」と言われていたのですが、そのようなことは言われなくなり、担任の先生も変わっていったので、過去にそのような気になる子だったと思われていないはず、と親御さんは言っていました。


発達や成長、治る方向へと歩んでいる姿が見えているのに、治り切らない人がいる。
そんな人たちがいることに気がついたあと、あと一歩のところで何が覆いかぶさるのかと考えたら、その要因の一つに言葉があるように感じたのです。


治っている人、治り切る人の多くは、障害を意識していないように感じます。
障害を意識しながら治すというよりは、治すことにまい進していたら、いつのまにか障害が意識の外にいっている、というように見えます。
もちろん、障害という言葉を聞けば、また何かのきっかけに自分の障害が意識の上にあがることもありますが、その“障害”に引っ張られないと言いますか、“障害”が自分のコントロール下にある、といった感じです。
障害が消えてなくなるというのではなく、日頃、障害を意識することがないくらい生活できていて、時折、意識に上がってきたとしても引っ張られることなく、自分の中の一つとしてコントロールできている人が治った人のように思います。


治り始めたら、障害と距離を置くことも必要なのかもしれません。
厳密に言えば、「治らない」「生涯変わるものではない」という雰囲気を出す障害と言う言葉、人、環境から。
治り切ってしまえば問題ないのでしょうが、そういった雰囲気から影響を受け、再び「障害を持っている自分」へ、治らない方向へと後戻りしてしまう可能性もあると思います。


本人の周りに、どんな言葉、どんな人、どんな環境があり、どんな雰囲気を出しているでしょうか?
案外、治り切るか、どうかにかかわっているような気がします。

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