雰囲気を察した子、雰囲気を察してほしかった子

「みんなから“バカ”って言われる」
私からの質問に、頷くか、首を横に振るかだった子が、唯一、はっきり言った言葉でした。
この言葉には、この子の思いがギュッと詰まっていたんだと感じましたね。
だから、私はすぐにこう伝えました。
「みんなから“バカ”って言われて悔しいんだよね。本当は勉強頑張りたいんだよね。おじちゃんに任せて。〇〇ちゃんが学校でちゃんと勉強できるようになるための方法を知っているから、一緒にトレーニングしようね」と。
その子は、泣きながら何度も頷いていました。

小学生くらいの子ども達って残酷な面もあるし、大人の空気を察しちゃうところもありますね。
授業中、間違った答えを言ったり、テストの点数が悪かったりすると、すぐにバカだ、バカだと言いますし、大人たちの雰囲気を察し、「〇〇学級(支援級)に行けよ」なんてことも言っちゃいます。
実際に、この子も在籍クラスで同様の目に遭っていました。

担任の先生も、その子と話をしたそうです。
そして、その子から出た言葉が冒頭の言葉。
それを聞いた先生は、「それなら〇〇学級(支援級)で勉強してみたら」とその子に言い、親御さんにも言ったのでした。

同様の反応をしたのは、学校の先生だけではありませんでした。
どこに行っても、この子は「みんなから“バカ”って言われる」と言いました。
すると、医師も、相談員も、療法士も、みんな、特別支援学級を勧めました。
「このまま、辛い思いをさせてると、(でました!)二次障害になりますよ」
「授業についていけていないんだから、通常級は無理でしょ」
「将来を不安に思っているかもしれませんが、福祉がありますから」

この支援者たちのコメントを聞いて、私は違和感を持ちました。
どうして、この子のメッセージの奥にある気持ちを汲み取ろうとしないのかな?
どうして、この子がかわいそう、だから、その場から別の場所へ、なのかな?
どうして、誰一人、その学級で勉強できるように手伝うよと言ってあげられなかったのかな?
せめて、この子が今の学級で勉強したいという思いを察し、汲んでほしかった…なんて思うのです。

確かにあまり話をするのが得意ではない子です。
特に家以外で話をするときには、余計にしゃべれなくなります。
でも、この子が言った「みんなから“バカ”って言われる」っていうメッセージには、辛い思いだけではない思いも漂っていました。
子どもってみんな、勉強するのが好きなんだと思います。
それは知的障害のあるなしに関わらず。
「知りたい」「できるようになりたい」って欲求を持っているのだと思っています。

本当は勉強したいという思いを伝えたかった。
でも、大人たちの「通常級は無理」「特別支援学級へ行って」という雰囲気を察しちゃったのでしょう。
それで、やっと言えたのが、「みんなから“バカ”って言われる」という言葉だと、私は想像しています。
言葉で表せていないその子の“思い”に目を向けること。
そして、大人が先にメッセージを醸し出さないことが大切だと思った出来事でした。
お母さんも「人間脳を育てる」の本を購入されましたので、本人、親御さんと一緒に「学習できる土台」作りに取り組んでいきます。

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