【No.1074】未来を認識する力を育む3ステップ

我が家の下の子も、最近、"未来"がはっきりしてきました。
つい数か月前までは、「また今度」「〇回寝たらね」「明日やろうか」など、大人の言葉を場面と合わせて暗記していただけに過ぎませんでしたが、今ははっきり未来があるのがわかっている様子があります。
カレンダーを見ながら保育園での遠足を楽しみにしたり、出かけるのがわかったら、すぐに片づけを終えたり…。
未来があるのはヒトだけですので、下の子の人間脳も育ってきているのがわかります。


発達相談においても、お子さんに未来を理解する力があるか、どのくらいの未来が認識できているのかを確認します。
この未来を認識する力は、その子の発達段階を知る上で、今後の学習の伸びを予測する上で、とても重要なポイントになります。


未来が理解できるようになり、その認識が育っていくのは、3歳前後です。
ということは、0歳から3歳までの間に、他の動物にはない未来を認識する力を養う課程があるのです。
その最初の芽生えは、いないいないばーだといえます。
大人の顔が手で隠れる。
その瞬間、赤ちゃんはその大人がいなくなったと認識する。
でも、次の瞬間、手が開き、顔が現れ、ホッとする。
このいないいないばーの一連の流れがわかるようになることこそ、未来の芽生えです。
顔が隠れたあと、「また、お母さんの顔が現れるだろう」というほんの1秒に満たない未来が予測できるようになる、が最初の一歩です。


いないいないばーの次のステップは、繰り返し行動だと考えられます。
まだしゃべり始める前のお子さんは、何度も同じ行動を繰り返します。
おもちゃを掴んでは床に捨て、おもちゃを掴んでは床に捨てる。
これは、まるで理科の実験をしているようです。
いないいないばーの段階とは異なり、自分主導で今と近未来を行ったり来たりするのが特徴だといえます。
「僕がこうしたら、〇〇はこうなる」


そして第3のステップは、自分の身体を通した未来予想です。
いないいないばーが視覚を中心とした現在と近未来の行き来、次が視覚とモノを結びつけてだとしたら、五感と身体を結びつけてということになります。
「椅子から飛び降りたら、自分はあのあたりにつくだろう」というように行動してみる。
そうやってモノの変化で感じていた未来を、自分の身体を使って感じようとする。
同時に、身体を動かしますので、感覚のフィードバックも生じてきます。
「椅子から飛び降りたら、足がジーンとした」
これも自分の行動後の感覚の変化を感じることで、「未来が確実に存在する」というのをまさに体感して認識しているのです。
未来は知識や情報ではなく、目に見える変化、モノの変化、自分の身体の変化という過程を経て、その存在を実感するものなのです。


発達相談において、この未来を認識する力が育っていないお子さんとも出会います。
親御さんは落ち込まれることもありますが、この未来を認識する力も育てられるのです。
知的障害だから、ここは育たない、育てることが不可能だ、ということはありません。
もちろん、そのお子さんによっては、3歳前後の段階までいくことが難しい子もいるかもしれませんが、上記のステップを少しずつ、1つでも上げていくことはできるのです。


まずは、自分のお子さんが、どの段階にいるのか、確認する必要があります。
3歳前後の段階までいけば、あとは体験を通して本人が育てていきますので、我が子がステップ1なのか、2なのか、3なのか、ということです。
もしステップ1なら、本人が視覚的に認識できる変化をどんどんやってみる。
他の発達同様、やりきったあと、味わい切ったあと、次のステップに進むものです。
ステップ1だから、モノの変化を使ってステップ2に押し上げよう、というのは適さない方法です。


未来を認識する力が重要なのは、それが向上する意欲のもとになるからです。
なぜ、勉強するか、練習するか、といえば、変化した自分が認識できるからです。
もちろん、完全にその変化を予測することはできませんが、「未来は変わる」ということを体感的に知っている人は頑張れる人です。
反対に言えば、その未来が認識できなければ、その子には今しか存在せず、闘うか逃げるかの2択になってしまいます。
勉強ができるのに、勉強することにネガティブな感情を持っている子の中には、この未来を認識する力が弱い子もいます。
体感的に未来がない子は、今行っていることの意味も、意義も、理解できずに意欲が培われていかないものです。


未来の意義とは、選択できることだといえます。
自分の意思と行動によって未来は変化する。
未来を変えられることを知っている人は、前向きに行動できる人になります。
その根っこを辿っていけば、いないいないばーから始まる未来を認識する力を育てるステップです。
感覚的に、体感的に未来がわかる人に向上心が宿る。
ですから、私がお子さんと向き合うとき、この力に、発達段階に注目するのです。




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