2020年11月2日月曜日

【No.1124】「長所を伸ばすか、短所を減らすか」ではなく、「資質を磨く、未発達を育てる」

時々、「発達障害だから私なんだ」「自閉症の特性があって良かったんだ」というような人を見かけます。
たぶん、これは自閉症を一つの才能として捉えているというか、そこに極端にフォーカスしているんだと思いますね。
裏を返せば、それだけ生きづらいということです。
単にポジティブな才能だとしたら、「私、絶対音感があるんです」とか、「私、過敏に相手の気持ちを察することができるんです」とか、「私、一度見た景色をそのまま覚えていられるんです」と言えば良いのですから。


何だかわからないんですが、私にとってかけがえのないものなんだ、それこそが私なんだと言う一方で、「生きづらい生きづらい」と言い、「理解を」と訴えます。
これだと良くなりたいのか、なりたくないのか、わかりませんね。
中にはアクロバティックな主張もあって、「この長所(?)を無くすくらいなら、ずっと発達障害でいい」などという人たちもいます。
まさに、これこそが医原病というか、特別支援病というか…。
育つ部分、治る部分、活かす部分がごちゃまぜというか、良く分かっていないんでしょうかね。
流れ作業のように、マニュアル支援によって「脳の機能障害」という言葉で、「はい、おしまい」になってしまう現状。
一人ひとりの"人"に対するアセスメントが行われていないという実態と、「大人の発達障害はちょっと…」と敬遠しがちで、子ども以上に諦めの態度で臨んでいる支援者たちが、生きづらさに目を閉じて、やたらめたらに「長所長所」と言い続け、こういった人たちを育てているのでしょう。
まあ、支援の目的がいまだに「二次障害にならないように」というのですから、文章を見せられれば「文の才能がある」、絵を見せられれば「絵の才能がある」、こだわりのものを見せられれば「その道を極めてみたら」と、無責任発言が繰り返されるのだと思います。


少なからず、こういった大人たち、特別支援の中の戯言の影響を受けているのでしょう。
お子さんを育てている親御さんの中にも、「特性が良くなる」「症状が育ってみられなくなる」と「長所も消える」という関係性について疑問に思われている人たちがいますね。
ほとんどが感覚の過敏性に関連する部分だといえますが。
結論から言えば、過敏性がなくなる、つまり、聴覚が育つ、前庭感覚が育つ、嗅覚が育つ、味覚が育つ、視覚が育つが、優れて育っている部分まで打ち消すことはありませんね。
私が見てきた子どもさん達は、未発達が育ち、過敏性がなくなったあとも、それまでの長所、資質の部分は残ったままです。


どういうことかと申しますと、たとえば一番多いのが聴覚過敏。
聴覚過敏によって苦しいけれども、絶対音感みたいなことが見られる場合。
聴覚過敏の大元は、前庭感覚の未発達なので、そちらが育ってくると、聞き取りが育っていくんですね。
音の聞き取りが良くなる、人の言葉の聞き洩らしが減る。
で、絶対音感みたいなものも残り続けるんです。
でも、これは一つ条件が合って、「この子は音の聞き分けが素晴らしいな。だから、ピアノを一緒に楽しもう」などと、そちらの方面でも育てようとしている場合に、です。
「うちの子、絶対音感がある。音楽の才能がある」と喜んでいるだけではダメで、その才能に気づき、一方で聴覚過敏、聴覚の未発達をどうにかしよう、育てようと、イメージで言えば両方から刺激し、育てている場合、それが聴覚が育ったあとも才能の一つとして残り続けるのです。
よく見かける「聴覚過敏は障害特性。でも、絶対音感は才能。だから、普段はイヤーマフを付け、家では音楽をたくさん聞かせる」という方向では、絶対音感を持った生きづらい人にしかなりませんね。
生きづらさ、未発達を育てるからこそ、資質が開花するのです。
もちろん、未発達を育てるだけでも、資質を伸ばそうとするだけでもダメで、よりバリエーションをもって豊かに育てることが重要です。


この前の発達相談でも、「心を育てるってどうしたらいいんですか?」と尋ねられました。
これもギョーカイ支援あるあるで、生きづらさの根っこにアプローチできない支援者が「心が育てば、できる子です、この子は」なんていうわけです。
障害特性はそのままで、できることは周囲の理解と支援だから、「心」という曖昧なものに注意をそらそうとするんですね。
身体が不調だと、気持ちも不調になります。
だから、身体の不調から整えていくんですね。
自由自在に動けない身体だから、心がいつまで経っても伸びやかになっていかない。
それと一緒で、才能、資質も、土台となる身体が整っていないと発揮できないし、磨きもできない。
いくらお題目のように、「あなたには才能がある」なんて言っても、その才能が発揮できなきゃ意味がないわけです。
文を描くのも、絵を描くのも、何かに詳しいのも、全部、身体がないとできない、身体が動かせないと表現することができない。
口先は妄想で、動いて初めてそれが現実となる。
お子さんを育てている親御さんは、本人の資質を見極め、そこを刺激しつつ、一方でその裏にある未発達を育てることをお忘れなく!




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