新たな喜びへと紡いでいく

神経発達障害ということは、神経の発達に何らかの障害が起きている状態だといえます。
ですから私は、その人の神経発達を妨げている“何か”に思いをはせます。
その何かに気づければ、本来歩んでいただろう発達の流れに解き放つお手伝いができるから。
妨げていたものは、育みの大元を教えてくれる。


「論文を書いたら」「成果をまとめて、発表したら」という話をしてくる人がいます。
しかし、私の仕事、役割、したいことは違うのです。
私は、目の前の人が自分の成長に喜ぶ姿を見て喜ぶのが仕事。
私は、目の前の人が少しでも辛さから解放され、より自由に、より自立的に、より主体的に、自分の人生を歩む出す姿を見て嬉しくなるのが仕事。


研究し、論文を執筆することが役割であり、仕事の人もいます。
その人達は、そういった成果を示すことで評価されます。
でも、私は目の前にいる人のために、自分の力、時間を注ぎたいと思うのです。
それに私に対する評価は、利用する人がいるか、いないか、その一点につきます。
昨日で7年目に突入しましたが、その歩みの一日一日が私に対する評価の日々だったといえます。


神経の発達に何らかの障害があり、今、発達に遅れが出ている状態である。
しかし、その何らかの妨げ、原因も、発達に遅れが出ている程度、どのあたりに発達の遅れがあるのかは、一人ひとり違うはずです。
呼び方、括り方は一緒でも、その状態像は一人として同じ人はいない。
だからこそ、私は、目の前の人と真摯に、真剣に向かい合ってきました。


状態像が一人ひとり異なるのですから、その育み方も、一人ひとり異なるはずです。
この人でうまくいったことが、あの人ではうまくいかない。
そんなことは多々あります。
でも、その一方で、この人でうまくいったことが、あの人でもうまくいくこともあります。


私が向き合うのは、目の前の一人です。
だけれども、向き合う前には、大勢の人達との出会いと気づきと教えが存在します。
多くの方達から頂いた知見と、目の前にいる人の育みは繋がっているのです。
7年目を迎えた今、私の仕事は、役割は、したいことは、この成長した喜び、辛さから解放された喜びを、新たな人へと繋いでいく、新たな喜びへと紡いでいくことのような気がしています。


全国には、我が子を、目の前の人を治す親御さん、実践家の方たちがいらっしゃいます。
私は、その方達の育み、知見から多くのことを学ばせていただいています。
治している人達の目の前にいるのは一人かもしれませんが、その一人と出会う前には、大勢の人達の存在があるはずです。
私が、治している人達から学ぶということは、その人達の背景にある大勢の人達と繋がりを持つことだといえます。


発達障害は、状態像に名前を付けたようなものです。
でも、具体的に、どこに障害、妨げがあって、どの程度、発達が遅れているか、どこの部分に発達の遅れがあるかを示しているわけではありません。
ですから、人によっては、栄養面を改善したら治っても不思議ではありません。
赤ちゃんの運動発達をやり直したら治ることもあるでしょう。
機械音を減らしたり、自然の中で遊んだりしたら治る子もいるはずです。
だって、栄養が、運動発達のヌケが、機械音が、遊びの乏しさが、神経発達の妨げになっていた人もいるはずですから。
神経の発達を妨げたものがあるのなら、そこからやりなおせば、育っていくはずです。


妨げが発達の凸凹を生んだのなら、その妨げを見つけ、そこから丁寧にもう一度、育て直せばよいのだと思います。
神経発達障害は、「現時点で発達が遅れているよ」と言っているだけで、その人の未来、可能性まで否定しているわけではないのですから。
もしかしたら、「現時点で発達が遅れているよ」と言われる人の中には、その妨げの原因が普遍的なものであり、その結果として元には戻らない、という人もいるかもしれません。
しかし、それだって、現在の科学では証明することができません。
だったら、治った者同士で手をつなぎ合い、その人に合った治す方法を、より良い育み方を目指し、試行錯誤して歩んでいけば良いのだと思います。


「この子は、一生しゃべることはないから」と告げられた子が、今では普通に話しをしてコミュニケーションをとっています。
「この子は、一生福祉だから」と告げられた子が、今では普通の人として一般就労しています。
確かに、医師や支援者から告げられた通りの人生を歩む人もいるでしょう。
でも、目の前の人が、大事な我が子が、そういった人達と同じ人生を歩むとは言えないのです。
だって、発達に遅れが出ているのは同じだけれども、その原因も、程度も、治し方も、育み方も、一人ひとり違うから。


私は、今まで出会ってきた人達が喜ぶ姿を、今目の前にいる人と繋いでいきたいと思います。
慌ただしくも、7年目を迎えることができました。
利用してくださった皆さま、いつも応援してくださっている皆さま、心より感謝申し上げます。
ニーズがある限り、日々精進し、頑張っていきます。
本当にありがとうございました。

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