【No.1464】模倣する力を育てよう

ことばの発達において、「模倣」は大事です。
聞いた音を模倣することで学習していくからです。
しかし、ことばの模倣はもちろんのこと、模倣自体、ほとんどしない、できない、という子も少なくありません。
発達検査や知能検査で「模倣の項目が低く出た」というご家族も多いのではないでしょうか。


定型発達といわれる子ども達は身近にいる家族の動きを見たり、言葉を聞いたりして文化的な行動を身に付けていきます。
靴下を履くというのを目の前で見せると、同じようにやってみようとする。
最初はできなくても、繰り返していくうちに指の動き方を覚え、自分で靴下が履けるようになる。
しかし、自閉っ子は靴下を履いているママを静かに見ている、といった感じです。
そうなると、なにかを教える手段がすべて動作誘導、つまり、手をもってあげて一緒に動かしてみるということがメインになり、それだと感覚過敏や多動傾向のある子は難しくなります。
で結局、身辺自立が遅れ、それもまた“発達の遅れ”と認識されてしまう。


「模倣する力はどうやって育てたらいいんですか?」という相談はよくあります。
「簡単な模倣から始めましょう」とアドバイスをもらうそうなのですが、私は模倣の練習よりも、模倣を知ることが先なのではないかと考えています。
模倣しない子、目の前の人の行動に反応しない子は、そもそも模倣、真似という存在に気が付いていない。


私が提案するのは、「まず親御さんがお子さんの真似をしてみましょう」ということです。
子どもさんがやっている動き、遊び、声をそのまま真似をする。
もちろん、最初は見向きもされないでしょうが、突然、「自分と同じかも」と気付く瞬間がきます。
それはことばを覚えるプロセスの一つと同じように、最初は「あー」とか「ピー」とか身体のままに発声した子が、それを真似する母親の声にハッとなり、お母さんの声と自分の声を一致させていくのです。


どういった行動を真似するのが良いかと問われれば、いろんなご家庭をみていると、やっぱり子どもさん自体が好きな遊び、繰り返している動きや声などが良いと思います。
そういった熱中する行動は快の感情と結びついていることが多く、快の感情は神経に強い刺激として伝わっていくからです。
先ほどのことばを覚えるプロセスでも、人間特有の人から反応があると嬉しい(「共感の快」)という能力がありますので、声を出して母親から反応が得られると快になり、もっともっととなる原理と同じです。
自閉っ子はこの「共感の快」が弱いといわれていますので、好きな行動の真似が良いのだと思います(定型発達の子どもさんは靴を履くことに快、テンションは上がりませんが、喜んでくれるお母さんの反応に共感の快を感じて学習していきますね)。


ブログやSNSの難しいところは、どうしても一般論になってしまうことです。
ですから「模倣をしない子は、親御さんのほうから模倣しましょう」と締めくくると、必ず当てはまらないケースが出てきます。
当然、親御さんが模倣しても反応しない子もいます。
そういった子どもさんの中には、模倣は認識できているけれども、そもそも脳と身体が繋がっていなくて、同じ動きをしようとしてもできない、しようとするけど身体がしんどいからやらない、という子もいます。


他にも、見ているようで見ていない子もいて、注意の向け方のほうに課題がある子もいますし、意識レベルの低下が疑われる子もいます。
ひと言で「こっちを見ているはずだけど、模倣しない」といっても個別に観察してみると、そもそも模倣に気づく以前に、視覚情報として認識できていないよね、ってこともあるのです。
さらにちょっと紹介すると、その“見えてない”には心身の不安が強くて防衛状態で閉ざしている状態もありますし、ほかの刺激に強く反応してしまう結果、視覚情報が入っていかない状態もあります。
特殊なケースかもしれませんが、敢えて真似しない、意思をもって真似しない、というお子さんもいました。


『学ぶ』の語源が真似ぶといわれているように、まねることで私たちはいろんなことを学習していきます。
ですから、模倣の躓きは身辺自立に始まり、教科学習や仕事、社会性など様々な学習に影響が出ます。
ですから、できれば早い段階で模倣する力を刺激し、養っていければと思っています。
ある程度、年齢を重ねた子どもさん、若者の中には「親や人のことは真似しないけど、ゲームや動画の人物、キャラクターがやっていることは真似するんです」というケースもよく耳にしますので、そういった方面からアプローチしていくのも良いかもしれませんね。
もちろん、実物の人の模倣が理想ですが、情報量、刺激(動きだけじゃなくて、匂いや温度、質感、感情など)が豊かなので脳神経的に。




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