「愛着障害は治りますか?」(花風社)を読んで

学生時代、生まれて初めて関わった自閉症の男の子のことが知りたくて、書店の特殊教育コーナーで手に取った真っ赤な本。
タイトルは「自閉っ子、こういう風にできています!」
その通称赤本と呼ばれている本を手にしてから、今まで10数年、ずっと花風社さんの本を読み続けてきました。
そして、今日手にし、今日読んだ新刊は、読み終えたときに今までと違うものを感じたのでした。
それは読み手に迫ってくる印象です。
「治すかどうかは、あなた次第です」というメッセージが。


花風社さんは、今までにも多くの治すためのアイディアを提供してくださいました。
特に栗本啓司氏の著書「自閉っ子の心身をラクにしよう!」が発売されて以降、ここ数年で治すためのアイディアのエネルギーが勢いを増した印象を受けます。
そして、そのアイディアに触れた全国の自閉っ子(もちろん、大人も!)が、どんどん心身共にラクになり、発達の遅れ、ヌケを取り戻し、治っていっている。
実際、私も援助している方達が変わっていく様子を目の当たりにしています。
花風社さんの本から得たアイディアが、日々の着想の始まりということは多々あります。


治るためのアイディアをたくさんいただけたし、治る人もたくさん出てきた。
ですから、治る時代、治す時代、治すべき時代を今、私は生きているのだと思います。
栗本氏は今日からすぐにできることを、灰谷氏は発達援助に関わる全ての人のスタンダードとなるべき知識と視点を教えてくださった。
正直、治すのだったら、もう十分アイディアをいただいた、という思いもしていました。
でも、今回、“愛着障害”という切り口で、今までの“治す”をもう一歩奥深く進めてもらった気がするのです。


新刊「愛着障害は治りますか?」の中に出てくる著者の愛甲氏が整理し、提示された『愛着障害のピラミッド』と『遊びのピラミッド』は、“見立て”に大きな影響を与えてくれるはずです。
愛着障害を持った他人への援助をする際にも、愛着障害を持った自分自身を援助する際にも。
適切な見立てができなければ、治すにつながっていきません。
治すための出発地点を明るく照らすのが、この2つのピラミッドです。
ですから、私の頭の中にも、この2つのピラミッドをしっかり建てておこうと思います。


あとがきには、「発達障害も、愛着障害も、障害ではない」というメッセージが記されています。
つまり、どちらも“治る”ということです。
その理由とそのためのアイディア、視点が、一冊を通して語られています。
この本が世に出た以降、治せない理由を探す方が難しくなるでしょう。
いや、反対に治せない理由が明確になるかもしれません。
治せない理由は、見立ての悪さか、援助者自身が愛着障害を抱えているからか、の2つになるはずです。
いずれにせよ、自分自身で乗り越えていく必要があります、手遅れは無いのですから。


師匠と呼べる人のいない私にとっては、唯一の師と呼べるような存在が、花風社さんの本です。
その師から、さらに“愛着”の視点も頂戴しました。
あとは己のセンスと鍛錬にかかっているといえます。
こんなにも重要な視点をもらったのに治せなかったら、それはすべて自分の問題だと思っています。
「治せなかったら、ただ単に“腕”がないだけ」そんなことを思います。
「自立せよ」という声が聴こえます。


愛着障害は、特殊なケースだけの話ではないこと。
「いつ背負った愛着障害か」という視点。
年齢別の症状の表れ方。
発達障害の人に愛着障害が生じやすい理由。
愛着障害から手当てすることで、生きやすさを獲得するのが速くなることも多いこと。
大人の愛着障害を治すための視点…。


発達障害の人と関わる人はもちろんのこと、人を育てることに携わっている人、この時代を生きづらさを抱えたまま生きている人にも読んでいただきたいと思います。
この時代をより良く生きるためにも、次世代がより良く生きられるためにも、著者の愛甲氏、この本は大切なメッセージを私達に伝えてくれるはずです。


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