10年前と比べて減った2つのこと

私が学生だった10年前と比べて、2つのことが減ったと感じています。
それは「子どもの世代が異なる親御さん同士の交流」と「子どもと親御さんの接する時間」です。

以前ですと、例えば就学前のお子さんを持つ親御さんと成人したお子さんを持つ親御さんといった異なる世代同士での交流がありました。
しかし、今はそのような機会がほとんどない、と言います。
縦のつながりはもとより、同世代の横のつながりすらほとんどないそうです。

子どもの世代が異なる親御さん同士の交流は大変意義のあることだと思います。
年齢の低い子どもの親御さんは年齢の高い親御さんの経験や話を聞くことで、将来我が子がどのように成長していくか、またどのようなことに気を付けて育てていけばよいか、のヒントを得ることができます。
よく親御さんの口から出ていた言葉で、「うちの子は、〇〇さんにタイプが近いと思う。だから、〇〇さんの成長の様子を聞いて、我が子の子育てや進路に活かしたい」というものがありました。
しかし、現在の親御さんたちから多く聞く言葉は、「我が子が将来どうなるかわからない。想像すらできない」というものです。
これでは将来に向けた準備もできませんし、不安ばかりが募っていきます。

10年前と比べて、放課後利用で来る場所が地域に格段に増えました。
障がいを持った子どもも受け入れてくれる学童クラブ等も増えましたし、デイサービスも増えました。
しかし、その結果として親御さんが我が子と接する時間が減りました。

今はどこの養護学校でも学校が終わる頃になると、デイサービスの車が並んで待っており、子ども達をそれぞれのデイサービスの場所まで連れていきます。
「学校から帰ってきてからが長くて長くて」と悩んでいた以前の親御さんたちと比べて、家族の負担という面では大変軽減されたと思います。
でも、その分子どもと接する時間が減り、平日は起きてから登校までと、夕方帰ってきてからご飯食べて寝るまでの時間のみしか接していないことになります。
夏休みや休日なども「朝から夕方までデイサービス等に行っている」という家庭が増えました。

端的に言って我が子のことを知らない親御さんが増えました。
「お子さんの好きなことは何ですか?」「得意なことは何ですか?」「将来、どうなってほしいと考えていますか?」という問いかけに対し、「わからない」「ぜんぜん見当がつきません」という返事が多く聞かれます。
10年前ならほとんどなかったことです。

支援を組み立てていく上で、親御さんからの情報は大変重要になります。
生まれたときから現在まで連続した子どもの成長を知っている唯一の人だからです。
過去の様子は、未来を想像するヒントになります。
過去の経験は、子どもの思考や行動を読み解くヒントになります。

この地域で自閉症支援を行っていく者としては、異なる世代がどのような生活を送っているのか、という情報を伝えていくことと、療育だけではなく、併せてお子さんの特性についても丁寧に情報を伝えていくことが必要だと実感しております。

コメント

  1. ななつぼし2014年5月18日 12:46

    こんにちは。
    私はありがたいことに
    学校を卒業しても小学部、中学部の保護者の皆さんとお話しする機会があります。
    それぞれお子さんにも個人差もありますが
    特性には似かよった部分もあるので
    参考になる部分は試してみることも
    ありかと思います。
    デイサービスがこれだけ台頭するのは
    子育ての困難さ、閉塞感や
    特別支援学校の下校時間の早さかと思います。
    放課後を支えるのは主に母親で
    365日、24時間体制なので
    デイサービスはありがたいと思います。
    大事なのは
    デイサービスと連携して
    子どもの状態把握をしておくことだと思います。
    保護者はその日生きることに精一杯のこともあるので
    簡単に書けるような特長シート等があれば
    自分の子どもの事を振り返ることができるかも。
    てらっこ塾のように
    自宅での療育の手伝いをしてくれるところがあれば
    子どもの様子を見ながら
    必要な療育を探ることができるかと
    思います。


    返信削除
    返信
    1. ななつぼし様

      blogを読んでいただき、ありがとうございました。
      また、貴重なご意見をいただき、勉強になりました。

      ななつぼしさんは、世代の異なる親御さん同士の交流があるのですね。
      「子どもが小さいとき、先輩ママから聞いた話で前向きになれました」とおっしゃっていた方がいました。
      支援者ではなく、親御さんの方が共感でき、勇気づけられるということも多いと感じています。

      デイサービスとの連携も、これからますます重要になってくると思います。
      すでにデイサービスは生活の一部になっている方が多くいます。
      ですから、家庭、学校、デイサービス等が連携し、情報の共有ができれば、お互いの特長を活かした支援ができるようになると思います。
      その中で、子どもの特性などを簡単に記入できるようなシートがあれば、有効な手立てになると思いました。

      私は大学を卒業後、24時間型の自閉症児施設で働いていましたので、「こうやったら本人が生活しやすくなる」といったアイディアを勉強し、経験してきました。
      ちょっとした工夫や配慮で、本人はもちろんのこと、一緒に生活される方にとっても、過ごしやすくなることがありますので、そのような方法を自宅での療育を通してお伝えできれば、と考えています。

      ななつぼしさんの前向きなご意見に、元気をいただきました。
      どうもありがとうございました!
      明日からも頑張ります(*^▽^*)

      削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

【No.1358】体軸が育つ前の子と、育った後の子

【No.1364】『療育整体』を読んで

【No.1369】心から治ってほしいと思っている人はほとんどいない