仕事への動機づけは人それぞれ

働くことでお金を得ることができる。
でも、人が皆、お金のためだけに働いているか、と言ったらそうではないと思います。
働く意欲を高めるものは、お金をもらえることだったり、人から感謝されることだったり、仕事自体が好きだったり、職場の人間関係だったり、働いている自分が好きだったり、人それぞれではないでしょうか?
このことは自閉症の人たちでも同じだと思います。

自閉症の人たちは"概念"で物事を捉えることが苦手です。
お金という概念、つまり、この細長い紙や銅の丸い塊にどのような価値があるのか、それぞれの価値の違いは、なぜお金が物と交換できるのか、などの理解です。
具体的に物事を捉える特徴がある自閉症の人たちの目を通すと、お金はただの紙切れであり、金属の塊です。
他の身の回りにある紙、金属とはどのような違いがあるのか、を理解することが難しい人もいます。

また、自閉症の人たちは物事の結びつきを捉えることも苦手です。
働く行為がなぜ、お金と結びつくのか?
例えば、パンを作っている人の場合、生地をこねているのはパンを作るためであり、その先にお金があると*自然に理解できる人は多くないです(*視覚的な手立てを用いれば、理解できる人もいます)。
中には、パンを作るという結果と結びつけることが難しく、生地をこねているのはパンの形に丸めるため、求められる生地の状態にするため、というような近い結果とでしか結びつけられない人もいます。

働く行為自体も概念であり、お金も概念です。
概念を理解することが苦手な自閉症の人たちが、また苦手なお金と仕事の結び付けを行わなければなりません。
さらにお金を得ることで好きなものが買えたり、遊びに行けるなどということを理解するには、仕事→お金→好きなもの、というような関係性を結びつけられなければなりません。
自閉症の人たちの中には、知的障害を持っている人も多くいます。
ですから、みんなが「お金を得るために働いている」とは言えません。

「働くことでお金がもらえる」「働いたら、〇〇ができるよ」といった伝え方や教え方では理解できなかったり、モチベーションが上がらなかったりする人もいることを理解しておく必要があると思っています。
仕事とお金が結び付けられない人がいても良いと思います。
仕事は仕事、お金の使い方は使い方で、それぞれ適切な方法を教えれば良いのです。
お金が働くことのモチベーションとつながらないなら、本人がモチベーションを上げられることを見つけ、それを活かせられれば良いと思います。
「ありがとう」の一言が、お金よりも大きな価値を持っている人なら、支援者が感謝の気持ちを表し、本人のやる気を引き出せば良いのです。

仕事やお金に関しても、一辺倒に教えるのではなく、個人の捉え方や考え方を出発点にして柔軟に教えていくことが大切だと考えています。


過去の働くことについて書いたブログ→「人生の目的は就労することではない」もどうぞ☆

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