【No.1408】発達援助のコツは「無人島」

「発達援助のコツは?」と訊かれることがあります。
コツと言われても、いろいろあって一言で表現するのは難しいのですが、今日はその中の一つについてお話ししようと思います。


私の発達相談では実際におうちに伺って数時間、お子さんと一緒に過ごします。
そしてその時間の中で私は想像するのです、「もし、なにもない環境で過ごしていたら?」と。
”なにもない環境”とは、つまり、なにも支援も、援助も、医療も、教育も、受けていない、ということです。
もしそんな環境の中で生きていたら、この子はどうやって自身の困難と折り合いをつけ、対処し、治療していたのだろうか、と想像します。


私たちは発達障害の子がいれば、無意識的に「支援・医療・教育」を連想し、そのために行動しています。
とくにこれだけ特別支援や教育、医療や福祉が整備された現代社会においては、「なにもしない」という選択肢はないようなものです。
一度発達の遅れが指摘されれば、医療⇔福祉⇔教育という無限ループの中にパッケージング化されていく。


だけれども、本当に「支援・医療・教育」は必要なのでしょうか。
それがないと、受けないと、どうにもこうにもならないものなのでしょうか。
受ける前は、子ども自身、何もできていない?していない?
そうじゃないと思うんです。


子どもさん自身をよく観察すると、自分で自分を支援し、治療し、学んでいることがわかります。
「偏食」と言われる子は、心地よい食感、匂い、色の食べ物を選択し、不快・不必要な食べ物を自らで取り除いている。
それを支援者が行えば支援となる。
「食べられるものが増えるように」と先生が張り切れば、偏食”指導”となる。
でももしこの子が自然の中で生きていれば、食べられるものを食べ、生きていくだろう。
内なる欲求、判断力で自ら食べるものを狭めたり、広げたりするのは問題なのでしょうか。


部屋の中を動き回る子がいれば、「多動」「ADHD気質」などと問題視される。
だけれども、彼は動き回ることでリラックスしているかもしれない。
情報過多になった頭の中を整理しているかもしれない。
息のあがる運動をすることで、酸素をより多く取り込んでいるかもしれないし、幸せホルモンを放出されているのかもしれない。
きっと彼も無人島にいれば、健康的で幸せな日々を送っていることでしょう。


独り言だって、言葉の学習かもしれないし、リズムや語感を愉しんでいるのかもしれない。
この子の場合は、”繰り返す”に癒しや学習、治療効果があるかもしれない。
そうやって一人ひとりの支援や援助、治療や学習に目を向けることが発達援助のコツだと思います。
彼らはなにもしていない、なにもできないのではなく、私たちが彼ら自身で行っている支援や治療に気がつけていないだけではないでしょうか。


私たちが「どんな支援をしたいか?」ではなく、彼らが「どんな支援をしているか?」
この前、一緒に過ごした1歳の男の子も自らで対処し、学び、成長していましたよ。
ヒトの持つ力は素晴らしい。
子ども達の持つよりよく生きよう、育っていこうという力は凄まじいものです。
支援を探すよりも、子ども達に支援を訊いてみるのはいかがでしょうか。


【発達相談のご案内】
11月に熊本、12月に宮崎に出張予定です。
もしこの機会に「発達の悩み」「我が子の発達援助の仕方を知りたい、学びたい」というご家族がいらっしゃいましたらお問い合わせください。
お問い合わせはこちら(てらっこ塾HP)


    


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