2018年9月1日土曜日

診断名は範囲であり、どの人にも飛び越えるチャンスがある!

「どうして、その支援方法なんですか?」と尋ねると、「自閉症だから」「LDだから」「発達障害だから」という言葉が返ってくることがあります。
「いやいや、障害名を訊いているのではなくて、その支援方法を選択した根拠、理由を尋ねているんです」と言っても、同じことしか返ってきません。
こういった噛みあわない問答が支援者同士で繰り返されるのですから、一般の人との間で理解し合える日は、当分、来ないと思います。


「自閉症」という診断名が付いたとしても、自閉症という人種や違う惑星から来た人というような意味ではありません。
でも、なんだか「自閉症」という言葉を、あたかも、そういった個体がいるような意味で使っている人が少なくないような気がします。


「自閉症」という略語です。
本当の意味は、「自閉症という人工的な診断の基準を満たす人」という意味です。
つまり、「ここからここまで自閉症ね」と、誰かが便宜上、引いた線と線の間の中に入っているよ、ということ。


ですから、私が尋ねる「どうして、その支援方法なんですか?」という質問に対し、「自閉症だから」は答えたことになりません。
「自閉症という人工的な診断の基準を満たす人です」と言っているようなものですから。
私が聞きたいのは、その個人のどういった部分に対し支援が必要で、その支援を選択したのかということなのですから。


その支援方法を選択した理由を尋ねて、その子の状態から導かれた説明が返ってこなければ、その支援方法は、支援者の趣味嗜好のレベルです。
それか、とにかく教科書通りに、「自閉症だから視覚支援」「LDだから、電子機器を使って」というようなマニュアルに従って支援しているフリをしているだけ。


そもそも人と向き合う仕事、それも発達という複雑でバラエティに富んだものと向き合っている仕事に、マニュアルなど作れるはずがありません。
マニュアルが存在するというのなら、それは下手くそでも支援者のフリができる道具にすぎません。
だいたいマニュアルが存在する組織や、マニュアルやメソッドなどをせっせと作ろうとする組織に、一人ひとりの個人と向き合った支援ができるわけありません。


マニュアルやメソッド、ナントカ資格、レベルⅠ・Ⅱ・Ⅲがでてきたら、その支援者の目はすでに仲間、支援者の方を向いているという証拠です。
本当に、一人ひとりと真剣に向き合い、個人に合わせた支援をしているのなら、そんなマニュアルなど作れないこと、作っても意味がないことがわかりますし、そもそもそんなものに時間を使っている暇がないものです。


私は親御さんにこのようなお話をします。
マニュアルのない営みなのですから、専門家も、親御さんも、意見の重みに違いはない。
むしろ、親御さんの方が、ずっと側で子どもと発達と向き合ってこられたのですから、感じるものは貴重であり、重みのあること。
だからこそ、支援者というのは、子どもの発達が躍動するように、また親御さんが資質を活かして伸びやかに子育てできるよう後押しするのが仕事であり、役割。
あたかも、支援者が答えを持っているかのように振る舞うのは誤りである。
本当は、そんなもの、持っていないのだから。


「自閉症」や「アスペルガー」、「LD」や「ADHD」「知的障害」など、その診断名にとらわれる必要はないのです。
そして、その診断名に、親御さんの心や行動、願い、直感、本能が制限をかけられてはならないのです。
あくまで、人工的に引いた線と線の間に、現時点で入っているということだけ。
範囲に入っているのなら、その範囲から飛びだせば良いのです。


一気にジャンプして飛びだすのは難しいかもしれません。
でも、一歩、一歩だったら、その線のそばまで進んでいけます。
それが「治しやすいところから治す」ということ。
発達のヌケがあるのなら、一つずつ育て直していけばいい。
そこにマニュアルも、専門知識も、資格も存在しないのです。
あるのは、親子の間で育まれる日常。


同じ診断名の範囲に入っていたとしても、一人ひとり飛び越える線までの距離は違います。
でも、それは歩みを止める理由にはなりません。
障害の程度や重さ、課題の多さは違っても、歩を進める機会、可能性はみんなが平等にあります。


ブログには、どちらかといえば、軽度や知的障害のない人の話題が多いですが、実際にはとても重い子からの依頼もあります。
当然、障害の範囲を飛び越えるまでの距離は遠いです。
でも、親御さんが歩を進めようする限り、私は全力でお手伝いしています。
それに、その子を見れば、同じように発達するエネルギーを持っているのです。


「どうせ軽度の人しか治せない」
「重い子には、何もできないのだろう」
と言われることがあります。
でも、その子の発達する力を信じ、後押しすることはできます。
診断名は範囲であり、範囲ならどの子にも、その線を飛び越えるチャンスはあると私は信じているのです。

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