抽象的なアドバイスでは成長していかない

最近、「支援を教えてください」という依頼がありました。
二人のお子さんを育てるママさんです。
お子さんの支援は、以前から私が関わらせてもらっていましたが、「自分自身がもっと支援の勉強をしなければいけない」という思いが強くなったそうです。
家族が支援について学ぶことは大事ですね。
だって、多くの時間を過ごすのが、家族だから。

この親御さんは、大変勉強熱心な方で、お子さんが自閉症と分かってから、勉強会や講演会、某機関など、足しげく通って勉強されていました。
学校の支援ミーティングも、なんとかコーディネーターに地域の医師や相談機関の人など、外部の人にもお願いして、「少しでも我が子のためになるように」と頑張ってこられたんです。
多くの専門家と呼ばれる人たちと交流があったことがわかります。
でも、そんな勉強を始めて10年以上が経った今、私に支援を勉強させてほしいとお願いしてくるとは…。

当然、こういった経緯を聞けば、「どうして私に?」しかも「今?」となりますよね。
(まあ、薄々は気づいていたけど)
なが~いお話をまとめると2つ。
今まできっちり結果を出してくれる人がいなかったのと、具体的なアドバイスをくれる人がいなかった、ということ。

この二つってリンクしているとは思いませんか?
私は、結果を出せない人は具体的なアドバイスが出せない。
具体的なアドバイスができない人は結果が出ないと感じますね。
よくいるじゃないですか、教科書通りのアドバイスしかできない人。
「自閉症の人には視覚的に支援しましょう」
「不適切な行動は無視して、望ましい行動をしたときに褒めたり、ご褒美をあげましょう」
「自己肯定感を高めるのが大事です」
「スモールステップで教えていきましょう」
などなど。
そして、こんなことを言う人が、実際に支援を始めると、衝立を立てて、スケジュールやCOMカードを作り、ちょっとずつ絵に描いて教えていく…みたいな。
どこに行っても、誰に聞いても、金太郎飴みたいな支援しか出てこない。
こんなんじゃ、わざわざ時間を割いて出かけるのがもったいないですね。
ネットを開き、「自閉症 療育」と打てば、すぐに出てくる情報です。
これじゃあ、いくら勉強しても支援の力はつきませんね。

とにかくみんな抽象的なんですよね。
スモールステップは分かったけど、実際はどんなステップに分ければいいの?っていうのが、聞きたいこと。
そして、どうしてそのステップに分けたのか、という根拠も聞きたいし、どうなったら合格かも聞きたい。
そもそも何故、スモールステップで指導していくのかも知りたいこと。
スモールステップをやるのが大前提みたいに話が進んでいることが多いですからね。
これくらい細かく具体的に説明しないと、なかなか支援に対する理解は深まっていかないと思いますよ。

私も他の支援者の話を聞くことがありますが、それを聞いても、帰ってすぐに実践できないな、っていう話ばかりに感じますね。
講演会に行ったことだけ覚えている講演会ってありませんか?
専門家と言われる人がそんなんだから、親御さんも、支援者も、育っていかないんだと思います。
だいたい相談してくることって抽象的なんですよね。
「友だちと喧嘩ばかりしてしまう」
「授業中、落ち着きがないんですよ」
「ひきこもりになってしまって」
というように、相談者は漠然と困ってるんです。
それを具体的に変換するのが、専門家の仕事だと思いますね。
そして、見えない未来を見せることも。

例えば、「授業中、落ち着かないんです」という相談でしたら、もっと問題の本質を具体的にしていきます。
「授業中、終始落ち着かないのか」
「どんな教科のときに落ち着かないのか」
「落ち着いて授業に臨める状況は」
など、問題の本質を具体的にしたあとは、その原因を探っていく。
国語でも読み書きはできるけど、落ち着かなくなるのは文章の勉強のとき。
だったら、文章問題が苦手かも。
文章読み解く力のどこかに原因があるかもしれないので、脳の特徴から読み解いていきます。
そして、原因の見立てができれば、「文章題を解く前に、絵を描くことをやったらいいですよ」とか、「文章を声に出して読む練習を毎日した方が良いです」とか具体的なアドバイスをする。
でも、ここまででOKではなく、「一日、原稿用紙1枚程度の文章の音読を3ヶ月くらい続けたら、テストの点数が上がると思います。それに比例して、授業中も落ち着くようになるはずです」というように、この取り組みを続けた先に見える景色も具体的に示すんです。
ここまで、できて初めて意義のあるアドバイスになると、私は考えてますし、実践もしていますね。

最初、親御さんから「支援を教えて欲しい」と言われたとき、迷ったんですよね。
お子さんとの勉強はやってますし、それに関する資料はすべてお渡ししていますから。
それ以外に、親御さんが自分自身の支援力を上げるための依頼でした。
私の仕事は、本人の成長を援助することですし、親御さんの支援力を上げるのは、そのための機関がありますから。
税金を貰って運営されてるしー、それができる、役割だって謳ってるしー。
過去にも同じような依頼が、親御さんや支援者、支援者を目指している人からありましたが、すべてお断りしてたんです。
まず自分でちゃんと勉強してから来てって感じです。
どうして私が一から十まで手とり足とり教える必要があるのかな、その労力があるなら、本人たちの直接的な成長のために使いたいと思ってるんです。

でも、この親御さんは断っても、断っても、お願いしてきました。
そういったやり取りをしている間に、この親御さんは我が子に対する熱い思いから動いていることが分かったんですよね。
だから、お受けしました。
本当に、勉強熱心な方です。
小さな疑問もほっておかない。
そして、お子さんの成長のために勉強している。
不自然な存在である"支援者"になりたい人なら、お断りしていました。
母親として成長したいと考えている方ですね。
この姿勢を見習ってもらいたいものです、お金を貰って支援している人たちに(ブ)

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