「我が子よりも一日でも長く生きる」

「私、これから飲み会♪」
こう言って子どもを施設に預けていくお母さんがいました。
私はいつも「楽しんできてくださいね」と言って、お子さんをお預かりしました。
障害を持って生まれてきた子どもを育てていくことは大変なことだと思います。
でもその中で、自分の時間を作って楽しめることは素敵だなと思っていました。

施設に我が子を預けることに対して、後ろめたさを持っている保護者の方は少なくありませんでした。
でも、施設を利用することで良いこともあります。
先のお母さんのように、自分の時間を持てたり、リフレッシュすることができます。
お母さんのストレスの増加が、お子さんに対する養育力の低下をもたらすという研究結果もあります。
明日からの療育のパワーを向上させるためにも、お母さんが元気になることが大切です。
"障害"は愛情だけでは乗り越えられないこともあると思います。
24時間365日、家族がケアをしなければならないというのはそもそも無理があります。
そんなときには、福祉の力を借りることも選択肢の一つだと思います。

また子どもにとっても良いことがあります。
自閉症の人たちが頭の中に入ったたくさんの情報をリセットすることができます。
日頃の情報過多の疲れを非日常の場所で空っぽにし、整理して、切り替えることができます。
そして家を出てみることで、将来どのようなスキルが必要か、今どのようなことができているか、改善しなければならないことは何かなどを知ることができます。
施設を利用してくれたお母さんの中には、子どもを預けているうちに家の模様替えをすると言っていた方もいます。
目の前で変化させられるよりも、帰ってきたらガラッと変わっているという状況を作る。
まさに環境の"リセット"と言えます。

「利用したい施設がない」という方は無理に利用する必要はないと思っています。
しかし、利用したいけれど、後ろめたさがあったり、周囲の目が気になったりする方には、施設の利用は決してマイナスなことばかりではないということを知ってもらいたいです。

「我が子よりも一日でも長く生きる」というお母さんの言葉を耳にします。
半分は冗談もあると思いますが、現在の障害を持って生まれた子どもの子育てをしているお母さんの状況を表していると思います。
自分の時間を上手に持てているお母さんの方が、子どもがとても安定して落ち着いていると感じることが多くあります。
お母さん自身の人生も大切にしてもらいたいです。

コメント

このブログの人気の投稿

【No.1358】体軸が育つ前の子と、育った後の子

【No.1364】『療育整体』を読んで

【No.1370】それを対症療法にするか、根本療法にするかは、受け手側の問題